美容師が手を加えた“被っている感”が出ないウィッグ
ハゲップルとして配信するなかで、2021年10月に「髪型は着せ替えられる」をコンセプトに美容師カット済みウィッグの制作・販売を行う株式会社NEJIKOを設立した。
「ハゲカレは芸人をやるだけあって、個性の活かし方とかプロデュースがうまい。自分では気づかなかった私の魅力を引き出してくれる」
そんな彼の“
客観的な視点”が入ったことで、新たな夢が加速したのだ。
インパクトのある金髪のウィッグ
「動画の企画を撮影する際、
いろんなウィッグで『自然に見えるのはどれ?』って聞いたら、彼が選んだのは“美容師さんが切ったもの”だったんです。『今まででいちばん良い』って。
10年間にわたってウィッグを試してきましたが、ファッション用はどうしても質感や細かい部分で“
被っている感”が出てしまう。それで友人の美容師さんに『失敗してもいいから切ってほしい』と頼んだんです。
やっぱり人の手が加わると髪にも動きが出るし、既製品そのままよりも馴染んで自分好みになる。それならば、最初から美容師さんが切ったウィッグがあればいいのにな……と思って始めたのが『NEJIKO』なんです」
美容師がウィッグをカットする(提供写真)
ハゲップルの2人、そこにパリコレでヘアメイクを務めたこともある美容師の監修が入り、念願のウィッグブランドを立ち上げたが、実際は
試行錯誤の連続だったという。開発は1年にも及んだ。
「(いろんなメディアに取り上げられて)うまくいっていると思われがちなのですが、本当になにもわからない状態からスタートしたので。ようやく今年9月にECサイトを完成させましたが、常につまずいています(笑)。納得のいく仕上がりには、なかなかならなくて。これからも改良していく予定です。
今後は、いつでもどこでもカットができるウィッグならではの利点を活かして、
“休眠美容師”と協力していきたいと考えています。世の中には、結婚や出産などを契機に仕事をストップして、職場復帰できないままの美容師さんが多いみたいなので」
コテを使って巻いていく(提供写真)
長くウィッグを被ってきた自身の経験をもとにしながら、プロの美容師たちとよりファッション性を高めることを目指す。
「たとえば、私が高校生だった頃にウィッグブームがきて、みんながただカワイイからという理由で被っていたように。ウィッグとわかったうえでも髪型とか色がいいねって言える環境の土台を整えていきたい。
いつか
アパレルブランドとコラボして、洋服のイメージに合わせた髪型をウィッグで提案したり、その逆も面白いと思っています。
洋服とウィッグのセットで世界観を表現できる。ファッション系メディアでもアイテムのカテゴリーのひとつとしてウィッグが認められたらいい。脱毛症の人に限らず、毎日洋服を選ぶように、みんながウィッグを着せ替えするようになるのが理想なんです」
<取材・文/藤井厚年、撮影/若狭健太郎>
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):
@FujiiAtsutoshi