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巨人はなぜ「若手を使わないのか」。ヤクルト高津監督と対照的な“原監督の哲学”

「指定強化選手」に指名する意味とは

 ヤクルトでは、ドラフト上位で指名し、チームの将来を担う人材は、二軍で「指定強化選手」に定め、鍛えている。成長の機会を与えるためにも、育成のプロセスを編成やスカウトといった編成と、一軍と二軍の首脳陣が定期的に情報を共有していくというわけだ。  先発投手候補の選手であれば、シーズンで目標のイニングを設定して投げさせ、打者の場合はまとまった打席数を与えて二軍監督がマネジメントするのだが、投手を育てるにあたって難しいのは、「アマチュア時代の評価が必ずしもイコールにはならない」という点だ。  たとえば高校時代に、「1試合130球くらいは平気で放って、3日連投して、300球も400球も投げられるタフネスさが売りの投手」がいたとする。  こうしたタイプはプロに入ってきた途端、70~80球でバテてしまうなんてことがよくある。その理由は、「打者のレベルが比較にならないほどプロのほうが高い」からだ。

高橋奎二に無理をさせなかった

 アマチュア、とりわけ高校生レベルであれば、下位を打つ打者は「安全パイ」と高をくくられているケースが往々にしてある。だが、プロの世界で下位を打つのは、アマチュア時代にクリーンナップを打っていた打者というのがごまんといる。  プロに入ると投手への負担がかかり、1球1球考えて投げることに加えて、走者を出せば考えなければいけないことが増えて精神的に消耗してしまう。それだけに、身体能力を高めていく作業を、二軍のスタッフが選手と考えながら共同作業で進めていくのだ。  現在、一軍で活躍している高橋奎二は、15年のドラフトでヤクルトから3位指名されて入団。デビュー当時は二軍では中9日で先発させていた。龍谷大平安から入団した彼は、1年を通してローテーションを守って登板するほど身体が完成されていなかった。  だからこそ、一軍に昇格させた当初は、二軍とほぼ同じ登板間隔で先発させていた。そこから登板間隔を短くしていった際、身体にどんな変化が生まれるのかを自覚させていった。疲れが残っていればそれは本人の課題となる。二軍の首脳陣と一緒に解決法を探っていき、今日の高橋が作られてきたというわけだ。
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三冠王の村上は、こうして育てられた
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スポーツジャーナリスト。高校野球やプロ野球を中心とした取材が多い。雑誌や書籍のほか、「文春オンライン」など多数のネットメディアでも執筆。著書に『コロナに翻弄された甲子園』(双葉社)
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