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巨人はなぜ「若手を使わないのか」。ヤクルト高津監督と対照的な“原監督の哲学”

巨人は完成品よりも「極上品」の選手が多い

 一方で巨人は、レギュラーとして高いレベルの選手が数多くいる。巨人に限らず、ヤクルトも含めた他の11球団では、一軍に送り込む選手は「完成品である」ことが求められる。ここで言う完成品とは、ただ打って、投げて、走って、守るというだけではない。首脳陣から出た作戦を即座に対応する力も求められるし、そのための高度な技術も身につけておく必要がある。  そうしたなか、巨人はチームの中軸を担うクリーンナップが、他球団から移籍してきた選手で占められた時期が長く続いている。それも完成品というよりも、「極上品」と言い換えてもいいレベルの選手ばかりだ。  今年も4番を打つ岡本和真の前後を丸佳浩、梶谷隆幸、中田翔らで固めていることが多い。その結果、生え抜きの若手が主軸を打つというケースが少ないのが、巨人というチームの特徴ともいえる。

坂本は原監督の“最高傑作”

 チームを指揮する原辰徳監督の監督生活16年間(02~03年、06~15年、19年~22年シーズン終了までを指す)、リーグ優勝9回、日本一3回のキャリアのなかで、育てた最高の選手が坂本勇人であることは間違いない。  2006年ドラフト1位で入団し、08年は松井秀喜以来の10代での開幕スタメンの座をつかみ、その後15シーズン以上、巨人の遊撃手として長く活躍してきた。  一方でこの年、原監督は試合前に必ず坂本にノックを打っていた。ボールを捕ってからの一連の動作のなかで、安定しない守備が課題だったからだ。一軍では安易なミスは許されない。技術不足は日々の練習で補うしかない。原監督が試合前に坂本を鍛えるのは必然のことだった。  だが、坂本に対するバッシングは、シーズンを追うごとに強くなっていく。一部のメディアから、「坂本はしばらく休ませたほうがいい」という声も大きくなっていった。
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外そうと思ったのは一度や二度ではない
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スポーツジャーナリスト。高校野球やプロ野球を中心とした取材が多い。雑誌や書籍のほか、「文春オンライン」など多数のネットメディアでも執筆。著書に『コロナに翻弄された甲子園』(双葉社)
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