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「テロリストの主張は仮に正論だとしても認めない」との態度を示すべきだ/倉山満

私刑を許せば正論が通らない国になる

 現代日本でテロを賛美しているアホどもに、面と向かって聞いてみたい。「個人が気に入らない奴を殺して良い社会が素晴らしいか」と。この程度の常識が通じない社会は嘆かわしい、では済まない。  戦前日本では、狂った言論が蔓延った。長引く不況ですさんだ人心、そこへ対外軟弱外交。トドメが二大政党の腐敗。それでいて当時の二大政党は強すぎて、何度選挙をやってもその権力は揺らがない。思いつめたテロリストは「もはや暗殺しかない」と、本当に政府要人へのテロを繰り返した。これを世論は誉めそやしてしまった。当然、模倣犯が続発する。あげく、政党政治を終わらせてしまった。結果、地獄に落ちた。正論が通らなくなった国になったからだ。テロリストどもが貧乏人救済を叫びながら、大不況を終わらせた高橋是清を暗殺するに及んでは、笑うに笑えない。

安倍元首相が統一教会の関係者なら殺してよかったのか?

 令和の現代。安倍晋三元首相の銃殺は記憶に新しい。  下手人の山上某は、親が統一教会に財産を貢いで不幸な生い立ちだった。だからと言って、無関係な人間を殺して良い訳がないだろう。一部の言論人に「安倍首相は統一教会と関係があった」と強調し、あまつさえ「殺されて当然の人間だ」と愚説を垂れ流す人間もいる。では、安倍元首相が関係者なら殺してよかったのか?  安倍元首相が統一教会の関係者だろうがなかろうが、殺してはならない。山上某には何の権利も無い。何の同情の余地なく、社会の片隅で刑に処すだけで良かったのだ。  ところが、日本社会は誤った選択を行った。安倍元首相の暗殺を機に、統一教会叩きを始めた。統一叩きが悪いとは言っていない。もちろん、叩かれるべき理由があるなら、その弾圧は不当ではない。ただし、テロリストの思うように社会が動いてはならなかった。仮に統一叩きが必要なら、ほとぼりが冷めるのを待つべきだった。テロリストに目的を達せさせてはならなかったのだ。如何なる正論も、やり方を間違えれば狂気を呼ぶ。  結果、今回の木村某。現職首相暗殺未遂事件を引き起こした。
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「テロリストの主張は通さない。仮にそれが正論だとしても認めない」との態度を示すべきだ
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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