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悠仁殿下お一人が背負う「皇位継承の歴史」/倉山満

天皇陛下と皇太子殿下だけが許された綴じ糸

 平成時代、山科流の綴じ糸が許されたのは、天皇陛下(今の上皇陛下)と皇太子殿下(今の天皇陛下)だけだ。上皇陛下が在位中から、いかに悠仁殿下に御期待されているか、この一事でわかろう。天皇陛下は重い立場にあるので、想いを軽々しく口にしない。静かに行動で示す。  現在、秋篠宮殿下が皇嗣(次の皇位継承予定者。皇太弟)として控えておられるが、次世代の皇族男子は悠仁殿下お一人。支える皇族が無くてはならない。  そこで政府は、旧皇族の男系男子孫の皇籍取得を提言している。これの何が重要か。  もし悠仁殿下がご無事に成長され、ご無事にお妃選びが行われ、ご無事に男子がお生まれになり、そのお子様がご無事に即位されれば、何も考えることは無い。しかし、障害は多い。何より、絶対に子供が生まれる技術など無いのだ。どんな制度であろうと、常に皇位の継承は不安定だ。男系以外の女系に拡大しても、あまり変わらない。  世の中には「男系で行き詰まった時に備えて、女系継承を容認しておくべきだ」と主張する論者もいる。たとえば、女系天皇容認論の主唱者の所功京都産業大学名誉教授だ。ただし、悠仁殿下ご誕生以降は当面は必要ないと述べ、女系容認論を控えている。それはそうだろう。これまで続いてきたものを続ける努力をせずに、途切れた時に備える議論だけするなど、本末転倒も甚だしい。

憲法の人権原理を皇室に持ち込まないのが常識

 そこで、昭和22年に日本国憲法と現行皇室典範の施行後も皇族の地位にありながら、占領軍の圧力で皇籍離脱を余儀なくされた、旧皇族の男系男子孫の方々に皇籍を取得していただこうとの提案がなされている。当時皇族だった方々が「元皇族」で、その子孫の方々は一般に「旧皇族」と呼ばれる。別に、昨日まで国民だった方々が今日皇族になって、明日天皇になる話ではない。旧皇族の男系男子孫の方々の次の世代の方々には生まれた時から皇族としての自覚を持って育っていただき、悠仁殿下をお支えしていただこうとの趣旨だ。  これを「憲法14条が禁止した門地による差別だ」との議論が一部にあるようだ。要するに、国民の中から誰かを皇族にすると差別に当たると言うが、「皇室は身分制の飛び地」という言葉を知らないのか。現在でも女性は婚姻により皇族になることはできるが、男性はなれない。14条が禁止する性別による差別が行われているが、誰も問題にしない。皇室の話に人権を持ち出すなど、憲法学の多数説が認めないからだ。たとえば宍戸常寿東京大学法学部教授は、「疑義がある」と言いながら乗り越えるべき論点を整理しつつ、「飛び地」であることを認めている。合理的な区別である以上、憲法の人権原理を皇室に持ち込まないのが常識なのだ。
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女系天皇容認などあり得ないが、皇籍取得も一筋縄ではいかない
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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