ニュース

“オタクを守る議員”は虚像だった…“不倫報道”の山田太郎政務官、取材を重ねた記者が明かす違和感

筆者が7年前に感じた違和感

山田太郎

筆者撮影

 当時からオタク層の支持を集めていた山田氏の事務所は人手には困っていなかった。でも、その光景は極めて不自然だった。同じ目的のために集まった彼らは、互いに会話したり、交流したりしようとは一切していなかった。黙々と作業をするだけ。  それが、山田氏が姿を現すと打って変わって歓声を上げるのだ。当の山田氏も事務所にいる時はパーテーションの奥に座っているだけ。毎日おこなっていたネット配信の時間を除いては支持者とは話そうともしていなかった。支持する者とされる者の間には深くて越えられない溝が常にあった。  より奇妙なのは、山田氏がオタク文化に関心を寄せた背景として挙げていたコスプレイヤーで腐女子だという妻や娘の姿だった。2016年の選挙期間中に妻子が姿を見せたのはわずかに数度だけだった。筆者がその理由を尋ねると「裏方に回っているので」と返答された。その後も妻子が支援者に挨拶することはほとんどなかった。浪花節になる必要はないが学生時代からの付き合いだという伴侶の出馬に、なぜこうも冷徹なのかと疑問に思った。きっとこの頃から、今回の報道の萌芽はあったのだろう。

側近も知らない山田氏の私生活

 もっとも奇妙なのは支援者はおろか近しい事務所スタッフでも人となりをほとんど知らないことだった。知られているのは、限られた公開情報のみ。当時の秘書は山田氏の自宅にいったこともないと話していた。  いまはネットのあちこちにかかれているが、山田氏の政治活動の始まりがピースボートであることも、2016年当時は、ほとんどの人は知らなかった。それでいて、取材からこのことを知った筆者が尋ねてみると隠すでもなく話し出した。ただし、常に自分がキーマンとしての視点で、である。山田氏の話の大半は「自分のネゴシエイトによって○○を実現した」というものばかりだ。それがどこまで本当なのかわからない。  人となりを見せることのない山田氏だから、推測することは難しい。山田氏が見せているのはオタク文化に関心を寄せ、マンガ・アニメの表現の自由を守っている議員としての姿のみ。もしかすると虚像かもわからないその姿をオタク層は必死に支持していたのである。取材を重ねる中で、その光景がハッキリ見えたので筆者は山田氏を取材するのをやめた。
次のページ
表現の自由を訴えてきたのに表現を恫喝
1
2
3
ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ