更新日:2024年03月29日 18:13
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吉幾三が告発した「CAにクレームをつける自民党議員」。理解していなかった“飛行機遅延”の真実

用語の間違いを指摘すると

 ただ、その後に続く新千歳空港での除雪体制の遅れに対し、すぐに関係部署に掛け合って改善したというくだりはさすがに議員さんの行動力と思わせた。  加えて、別のフライトで悪天候の着陸復航に対し、客室乗務員が搭乗客を安心させようと、機長にアナウンスを進言したことを評価したくだりも良い内容だと思う。降機時に客室乗務員をねぎらうのであればどんどん実行して欲しい。  最後に指摘すると、残念ながら専門用語の使用事例が間違っている。主輪が滑走路に接地してからでも再離陸はタッチアンドゴーとは言わず、「ゴーアラウンド=着陸復航」である。主に訓練で計画的に着陸(タッチ)し、すぐさま離陸(ゴー)することをタッチアンドゴーということをお伝えしたい。

機内は発言をする場ではない

飛行機機内のイメージ

※写真はイメージです。以下同(Photo by Adobe Stock)

 実際に議員が発言する機内の動画や録音がある訳ではなく、発言が明確に悪いと言えるものではないことから、吉幾三さんの動画を真に受けることもできない。しかしながら、告発した客室乗務員が本当にいたのであれば、議員の発言は厳しすぎたと思わせる。  航空機は、線路の上を統制されて動く鉄道と違って、空という空間をいくつもの航空路の中から選ばれて飛ぶ乗り物で、構造的に遅延が発生しやすい環境にある。遅延が困るのであれば、ビジネスジェットを使用すれば、遅れは少ないと考える。ブログを読むとビジネスジェットを視察していることから推進していることはわかる。自費でビジネスジェットに乗れば快適性が判るだろう。  また、海外の航空会社でも同じような行動を取れるだろうか。大きな声で怒鳴ったりして客室乗務員の業務を妨害したと判断されれば、すぐに警察官が来て拘束されることとなる。  今回の文書は、機内で発言することが前提で書かれていることがそもそも理解に苦しむ。機内は発言をする場ではなく、多くの人が同じ目的地に向かうために利用する公共交通の中なのだ。その場で意見することによりさらに遅れが生じかねない。  公共の乗り物では、運航者を信じた上で敬意の気持ちとマナーを持って利用したい。ブログ最後の「今後も原則に基づいて航空行政について発言して参りたいと考えます」との表現は、機内ではなく国土交通省内の航空分科会などの正式な場で前向きに実施いただきたいものだ。 <TEXT/北島幸司>
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。YouTube チャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「Avian Wing」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。Facebook avian.wing instagram@kitajimaavianwing
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