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元吉本芸人が“新卒採用650人企業”の社長に。「今こそ飲みニケーションが大事」と語る理由とは

人材不足が加速する昨今、有能な若手社員の囲い込みは緊要な課題だが、“若害”をもたらす若手に涙する企業は少なくない。その一方で、若者から熱視線を集める企業もある。 「関西では人気ベンチャーの一角に入ってると思いますね」 とその自信を覗かせたのは、元よしもと所属の芸人という異色の経歴を持ち、現在は大阪に本社を構え化粧品や人材など11事業を展開する「FIDIA」の代表取締役CEOを務めている森武司氏だ。
FIDIA 森武司氏

昨年12月に著書『スタートアップ芸人』を上梓したFIDIAの代表取締役CEO・森武司氏

同社には毎年2万人近くの新卒者が殺到し、’23年は500人、今年は650人を採用と、若手からの人気ぶりは凄まじい。一体、その秘訣はどこにあるのか、話を聞いた。

飲みニケーションは一周回って新しい

貯金ゼロ、高卒、4年間のニート生活と、いわゆる「社会的弱者」から“仲間力=仲間をつくる力”を武器に、年商146億円企業にまで育て上げ、創業以来18年連続増収増益を達成した森氏。 “若益”が集まる理由の一つに「飲み会がめっちゃ大事です!」と前時代的な飲みニケーションを挙げた。昨年12月に上梓した著書『スタートアップ芸人』でも、飲み会についての項目を設けるほど、企業運営において重要視するその真意とは? 「某飲料メーカーのWebCM『飲みに誘うのムズすぎ問題』が若手社員との接し方に悩む年上社員たちに突き刺さって話題になっていますが、コロナ禍で人付き合いが疎遠になったからこそ、一周回ってむしろ新しい。 だから当社では、若手社員との結束を強固にするために顔を突き合わせる機会を大事にしているし、役員の全業務のなかで役員会の後の飲み会がもっとも重要な位置づけになっています。 当然、会社主催の集まりだからといって無理強いは絶対にダメ。6~7割くらい参加してくれた御の字って気楽なノリくらいがちょうどいい。ただ、少数派の顔色を伺って機会そのものをなくしたり、その他大勢を犠牲にしたりすると、いい企業風土は育たないんちゃうかな」
FIDIA 森武司氏

FIDIAでは「役員にも月一回の定例会は百歩譲って休んでもいいけれど、定例会後の飲み会だけは絶対に休むな」と伝えているほど、社外での対話を大事にしているという

一番大事な社訓は“悪口を言わない”

人が集まると、口をついて出がちな上司や会社の不満だが、森氏は“悪口を言わない”を社訓にするほど重んじる。 「小学生かよと突っ込まれそうですが、少数の悪意が全体の総意になるのがネット社会の怖いところ。 いつの間にかできていた若手グループの数人が、ガス抜きと称して特定の人物をグループLINE上で罵るなど、実際に当社もつぶれかけた苦い経験がある。 逆に、陰口を叩かない。これを守るだけで、人間的な“信頼”と“誠実”を積立貯金でき、人間関係はほぼうまくいきます」
FIDIA 森武司氏

「悪口・陰口を言わない」は下段中央にいる執行役員の石田優太郎氏の発案。「石田が悪口を言っているのを本当に見たことがなくて。その行為が彼への信頼を積み立てている。当時は一番不人気でしたが、今は一番人気の社訓です」(森氏)

また、若手社員に好かれようと、すり寄るのもいただけないと、森氏は強く注意を促す。 「昇給・昇進、有給取得、人間関係などに対して『どう、不満ない?』と、無理に引き出そうとすると、たとえそう思っていなかったことも本当の不満に脳内変換されてしまいがち。 代替案や解決案がないなら、不満が放置されて増幅されていくだけだし、何より社員のやる気が削がれるので、ホンマに害でしかない」
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