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原画展を開催中の漫画家、大友克洋と江口寿史の豪華対談!

 4月9日より代表作『AKIRA』の原画を中心に約3000枚の原画を公開した「大友克洋GENGA展」(東京・秋葉原)を開催、注目される漫画家・大友克洋。4月26日より、パントーンを使用して80年代~90年代に描かれた作品35点を集めた原画展[tone](東京・吉祥寺)を開催中の漫画家・江口寿史。プライベートでもよく飲む仲だという2人の巨匠に、それぞれの原画展への想い、お互いの作品へのリスペクトについて語ってもらった。
大友克洋GENGA展

大友克洋GENGA展

江口: 大友さんのGENGA展は開催直前に内覧会で観させてもらったんですけど、圧倒的でした。漫画家はみんな打ちのめされて、打ちのめされながらも力をもらって帰ってくるんじゃないかな。漫画という表現のパワーを改めて知らしめたというところもあり、観に来た人が存分に楽しんで、それが復興支援にもなるという。チャリティとしても完璧です。すごくパブリックな展覧会という印象でした。 大友: 江口さんの原画展は明日からだっけ? 新しく描いたの?(※取材日は4月25日) 江口: いや、パントーン(トーンのように貼り込むカラーシートで、現在は製造が中止されている)を使って80~90年代に描いた作品だけを集めたんですよ。大友さんも、イラストにパントーンを使っていた時期がありますよね。 大友: 『YOU』(82年、NHK教育)のイラストなんかは、テレビに映るときに発色がいいからっていう理由で使ってたな。あとは「SPEED」(82年)の扉絵とか。 江口: 僕はイラストレーターの湯村輝彦さんが使っているのを見て、かっこいいなーと思って使い始めたんです。圧着が強すぎて、剥がそうとしたら下絵ごと削れちゃったりとか、意外に扱いが面倒くさいんですよね。使いづらくて諦めた漫画家もたくさんいるみたいだし。大友さんは、どうやって剥がしてました? 大友: ペン入れした線画にフィクサチーフ(パステルや鉛筆を紙に定着させるスプレー)を吹き付けてから貼って、剥がしやすいようにして使ってた。 江口: ははー。その方法はなかなか思いつかないですね! フィクサチーフ吹いた上から貼って色の出方には影響ない? 大友: うん、大丈夫だったよ。 江口: 僕はトーンを蛍光灯に当てて圧着を弱めたり、剥離液を使ったりしてました。 大友: ほかにもカラーシートっていくつかあったんだけど、パントーンが一番発色がよかったんだよね。当時、(吉祥寺の)パルコの地下にいづみや(画材店)があったじゃない。いろんな新しい画材があるとさ、使ってみたくなるんだよね。 江口: あの時代の流行っていうか、いろんな画材を使ってみたくなりましたよね。GENGA展でエアブラシを使って描いている作品を観たときは、漫画家仲間と「お、吹いてるねー!」って話してました(笑)。いろいろな手法を組み合わせて使っている跡が見えて面白かったです。 大友: 画材からアイデアが浮かぶこともあった。これをつかってこんな絵を描いてみようって。 江口: でも、やっぱり大友さんは「塗り」の人ですよね。パントーンや、今のパソコンでの着色は「描く」「塗る」っていうより「作る」って感じで、やっているうちに冷めていく自分もいるんですよ。大友さんの原画を見て、改めて「手塗り」の魅力を感じました。 ⇒【後編】に続く https://nikkan-spa.jp/202762 ●大友克洋GENGA展 代表作「AKIRA」の原画2300枚をはじめ、およそ3000枚の原画を展示。大友自身が震災被災地である宮城県出身ということもあり、来場者収益の一部は震災復興の支援活動に充てられる 12年4月9日~5月30日/[平日]11:30~20:00 [土日祝]10:30~20:00  第3火曜日休館(日時指定予約制) 於:3331 Arts Chiyoda 〒101-0021 東京都千代田区外神田6-11-14 http://www.otomo-gengaten.jp ●江口寿史原画展[tone] 今はなき画材・パントーンで制作した作品のなかから自身が選んだ35点を展示。作品はすべて購入可能で、「ストップ!!ひばりくん!」のイラストなど4点はオークション形式で販売 12年4月26日~5月9日/12:00~18:00(最終日は17:00まで) 於:リベストギャラリー創 〒180-0002 東京都武蔵野市吉祥寺東町1-1-19 HSアライビル1F/電話0422-22-6615 http://www.libestgallery.jp/eguchi/tone.html
大友克洋,江口寿史

「大友さんでも描いているときは泣いているなんて意外です」(左/江口) 「机に向かっているときは孤独なんだから、誰だって泣いてるよ」(右/大友)

●大友克洋(右) 54年、宮城県生まれ。漫画家、映画監督。代表作に「AKIRA」(第8回講談社漫画賞受賞)「童夢」(第15回星雲賞受賞)ほか多数。余白の使い方、風景の描き方、圧倒的なデッサン力など、「大友以前、大友以後」と言われるほどに後の漫画表現に影響を与えた。88年に自ら監督した『AKIRA』は世界的に高い評価を受け、「クール・ジャパン」の先駆けとなる。近年は映画監督としての活動が中心だったが、現在『少年サンデー』での連載を準備中 ●江口寿史(左) 56年、熊本県生まれ。漫画家、イラストレーター。代表作に「ストップ!!ひばりくん!」「すすめ!!パイレーツ」など。92年に「江口寿史の爆発ディナーショー」で第38回文藝春秋漫画賞受賞。その精緻な画風と魅力的な女のコのイラストが人気を集め、90年代以降はCMや音楽ジャケットなどを多く手がけるイラストレーターとしても活躍。大友克洋が原作・脚本・メカニックデザインを担当した『老人Z』(91年)では、キャラクターデザインを担当 取材・文/牧野早菜生 撮影/山川修一
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