更新日:2024年08月25日 12:38
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セブンイレブンにカナダ企業が5兆円の買収提案。日本のコンビニ業界「客足増でも売上が伸びない」理由

経営が非効率的だったセブン&アイHD

セブンイレブン

セブンイレブンの店舗

 売上は同規模だが、時価総額が倍以上の買い手。セブン側も多様な業態を抱え、経営が非効率的だったのが実情だ。  そのための改革として、前年に百貨店事業(西武・そごう)を売却、今年ニッセンHDも売却し、祖業のイトーヨーカドーも店舗の整理を実施中だ。もしコンビニ最大手の買収が実現すれば、今後のコンビニ業界はどう変わるか気になるところだ。委員会、株主、機関投資家などの判断を注視したい。  日本フランチャイズチェーン協会の発表(2024年8月20日)によると、2024年1月からの実績では、売上は前年に対して微増(2月はうるう年で営業日数が1日多い)ではあるが、客数の前年比同期比マイナスの月も多く、かつての勢いがないのは顕著である。 【日本フランチャイズチェーン協会の発表(2024年1~7月)】   全店売上      店舗数     1店舗平均1日客数   1店舗平均客単価 1月:9229億円(+1.6%)/55,657店(-0.2%)/727人(+1.9%)/735円(-0.3%) 2月:8938億円(+5.4%)/55,657店(-0.3%)/760人(+4.3%)/728円(-1.0%) 3月:9701億円(+0.3%)/55,620店(-0.2%)/778人(-0.6%)/723円(+0.9%) 4月:9539億円(+0.2%) /55,647店(-0.2%)/804人(+0.9%)/711円(-0.7%) 5月:9858億円(+1.3%)/55,641店(-0.1%)/808人(+2.1%)/713円(-0.9%) 6月:9775億円(+1.6%)/55,637店(-0.2%)/826人(-1.2%)/709円(+0.4%) 7月:10507億円(+0.6%)/55,684店(-0.2%)/850人(+1.1%)/716円(-0.4%)

イオンが展開「まいばすけっと」に注目

 コンビニは、食品、飲料、日用雑貨などを幅広く扱う長時間営業の小型店。約30坪程度の売り場にATMや多機能情報端末を備え、公共料金の支払いやチケット発行など多様なサービス機能も持ち、利便性を売る成長著しい業態だ。何も買う予定がなくても、立ち読みでブラっと寄る人も多く、ついで買いを誘発したりしていたものだった。開いていると安心する、なくては困る町のインフラ的な役割も担っていた。  しかし、社会の環境変化に迅速かつ柔軟に適合させてきたコンビニも、この節約志向の高まりに対応するのが困難になっている。また、ドラッグストアなどとの競争激化もあり、苦戦を強いられている。各社、さまざまなキャンペーンを実施しているが、なかなか優位性を確保できず、加盟店の集客支援にも苦労しているようだ。  コンビニは、食品、飲料、日用雑貨などを効率よく、小規模スペースで約3000品目を幅広く扱う小売店だが、最近は生鮮品を含む食品に特化したイオンが展開する「まいばすけっと」が注目を集めている。都心において、こだわりのある安さと品質を毎日提供するまいばすけっとは、買い物動線の長い大型スーパーと違い、効率よく買い物ができるので高齢者にも人気のようである。若者離れが深刻な中、その補完的役割を担ってくれていた高齢者まで他店に奪われる心配があり、コンビニにとっては“新たな脅威”となる存在だ。
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値引きシールを貼るなどの工夫も
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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