セブンイレブンにカナダ企業が5兆円の買収提案。日本のコンビニ業界「客足増でも売上が伸びない」理由
物価高による節約志向の増加でコンビニエンスストアが苦しんでいる。個人消費が4期連続(2024年1~3月)のマイナスとなり、消費者の先行き不安が高まっている。そして、物価上昇に賃金上昇が追い付かず、景気に無頓着だった若者も、節約を意識した購買行動に転換しつつある。
内閣府の発表によると、2024年 4~ 6月期の実質GDP(国内総生産)の成長率は、 0.8%(年率3.1%)となった。名目GDPの成長率は、1.8%(年率7.4%)となっており、これは同年1~3月期が自動車の認証不正問題などによる生産停止などにより落ち込んでいた反動と推測されている。
そのため、個人消費の基調は弱い状態のままのようで、不安が払拭された訳ではないようである。カナダの企業による買収提案が報じられたセブン&アイHD、非上場企業となったローソンなど、変化の激しいコンビニ業界について迫りたい。
行く機会が減ったコンビニだが、その存在価値は低下したのであろうか。日本フランチャイズチェーン協会によると、コンビニの国内市場規模は11兆6593億円、5万5713店舗、客単価720.5円(2023年12月時点)。コロナ前(2019年)の国内市場規模は11兆1608億円、5万5620店舗、客単価639.3円だから、デフレ終焉と緩やかなインフレもあり、コロナ禍は10兆円後半で推移していた売上は若干伸びているが、4年間で4%の伸びに留まっている。
ちなみに客単価は2019年の639.3円から2023年は720.5円と、4年で81.2円も伸ばしており、客数の伸び悩みを客単価で補っているようだ。客単価は9年連続で増加しており、緩やかなインフレと共に、昨年5月に行動制限がなくなり、コロナの5類移行で経済・社会活動が正常化したことが大きい。
それに加えて訪日外国人の回復による人流・観光客の増加、記録的な猛暑で高温などに対応した品揃えとキャンペーンの実施で、販売が好調だったことも要因とされている。
店舗が大型で経営効率が低いが低価格で集客力を高める大手スーパーに対し、定価販売を基本とするが小型店で小回りが効くコンビニ。コスパで勝負する大手スーパーと、経営効率が高くタイパで勝負するコンビニという両業態の対立軸は対照的だ。
セブン&アイHDがカナダの企業、アリマンタシオン・クシュタールから買収提案を受けたとの報道(読売新聞、8月19日)があった。翌日20日の朝の情報番組も一斉に報道している。買収額は5兆円らしく、世界全体で7万200店超あるコンビニのセブンイレブンがほしいのだろうと解説されていた。
アリマンタシオン・クシュタールが運営するコンビニ「サークルK」はアメリカで2位の店舗数をほこっているが、1位のセブンイレブンを買収すれば一気にマーケットシェアが高まる。
コンビニの国内市場規模は11兆6593億円
買収額は5兆円セブン&アイHD
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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