更新日:2024年08月25日 12:38
お金

セブンイレブンにカナダ企業が5兆円の買収提案。日本のコンビニ業界「客足増でも売上が伸びない」理由

値引きシールを貼るなどの工夫も

セブンイレブン

値引きシール付きのおにぎり(セブン)

 近くにあり便利だからと、お金より時間を節約するタイパ派の人たちに支持されていたコンビニ。店にとっては、ほぼ定価で買ってくれるからありがたい。廃棄処分を軽減させるために、値引きシールを貼り販売しているのは最近のことだが、基本は定価による販売だ。コンビニに行けば今のトレンドが分かるといったメリットも大きかったが、節約志向の人の増大に、来店数が伸びていないのも実情である。  人口減少をインバウンドによる海外旅行者で補完している日本。客数が伸びないのはコンビニ市場が飽和状態だからという理由だけではないようである。毎月、300品目以上の新商品が発売され、話題性を集めながらトレンド商品を作り出し、社会に価値を提供していたコンビニの訴求力の低下は否めない。  各社がいろいろなキャンペーンを実施し、今しか買えない、ここでしか買えない(有名シェフを冠したカップ麺など)など、限定品に弱い日本の消費者に販売チャネルを制限し、消費意欲を喚起して集客の努力をしているのはよく分かる。  また、あまり遠くに買物に行けない高齢者も昼食時にコンビニを利用している。一人暮らしをしている高齢者にとっては単に便利に買い物をするだけの場所だけでなく地域のコミュニティの場としても活用されており、地域密着の店として日課となっている人もいる。

本部とFC加盟店の共存共栄

ローソン

バリエーション豊かなコンビニの弁当(ローソン)

 コンビニはフランチャイズシステム(FC)を活用して本部と加盟店が共存共栄することを目的にした代表的な業態である。最初はお互いを、経営理念共同体として良好な関係の中、ベクトルを合わせながら、ビジネスを円滑にスタートさせるが、実績が思うようにいかなければ大変で、相互が見苦しく罵り合いを始め争うことになる。  お互いが不満を言い出し対決姿勢を表立って明確に示す強気な加盟店も多い。双方が話し合いでうまく解決できればいいが、言い出したら引き下がれないところも多くある。巨大なフランチャイズ本部を相手に戦う個人オーナーの覚悟は半端ではできないし、そう勝てるものではない。  加盟店同士が連携し、訴訟を起こすのはコンビニに限らず、よくある話だが、時間とお金の問題から相当な覚悟がなければできないだろう。加盟店が勝つケースはあまりないように思えるのが正直なところだ。加盟店側が勝訴したケースを紹介すると、「コンビニエンスストアにおける見切り販売妨害」について、東京高等裁判所の平成25年(2013年)8月判決で、加盟店側が勝訴した例があるがこれは稀なことである(「コンビニエンスストアの見切り販売妨害と優越的地位の濫用」より)。
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今年で50年のコンビニの今後は?
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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