53歳で早期退職した男性が「会社に残るべきだった」と心底後悔した理由。独立当初は順調だったが、思わぬ落とし穴が…
仕事をするなかで実力をつけ、フリーランスとして活動する人は珍しくない。荒川敏行さん(仮名・50代)もその1人だ。ただ、一寸先は闇。思いもよらぬ理由で独立を後悔する羽目になったのだという。
学生時代からパソコンが好きで、システムエンジニアになる夢を抱いていた荒川さん。新卒時の就活はまさに氷河期を迎えていた世代だが、無事第一志望のIT会社から内定をもらえたそうだ。
「入社後はプログラミングに熱中し、トントン拍子に出世することができたんです。新しい技術を得ることが楽しく、長時間の作業も全く苦にならなかった。気がつくと会社では1番の技術者と言われるようになり、45歳で部長に。昇進後は、マネージメント業が中心となったんですが、これが肌に合わなくて……。言うことを聞かない、技術力が低い、仕事のメンバーをまとめられないといった、部下の指導法に頭を悩ませる日々でした。これ以上の出世も望めず、『もう一度好きなプログラミングがやりたい』と思うようになったんです。そこで会社の設立を念頭に入れ、フリーで活動することを決意。妻も理解してくれたため、早期退職することにしました」
53歳で晴れて独立を果たした荒川さん。当初のうちはいたく順調にことが進んだという。
「得意先に退職の挨拶をしたところ、前の会社でお世話になった人々から仕事の依頼が複数入りまして。『全て自分でやらなければいけない』というプレッシャーはあったものの、滞りなく納品がし続けられました。ありがたいことに良い条件で『うちに来ないか?』と言ってくれる会社もあって。前職と変わらないくらい稼げていたので、早期退職して良かったなと心から思っていました」
フリーの技術者として充実した日々をおくっていた荒川さんに、突然不幸が襲いかかった。
「ある日意識がプツっと切れ、気がついたら病院のベッドで……。私は仕事のことが気がかりで、妻に聞くと『そんなことは気にしないで。脳梗塞で死ぬ寸前だったのよ』と告げられました。納期が迫っていた仕事もあったので、こうしてはいられないと思い、『すぐに仕事をしなきゃ』と起き上がろうとしたのですが、どうにもこうにも動けないんです。後遺症が残ると、SEの仕事ができなくなるかもしれないし、会社員ではないので働いていない間は収入も入ってこないし……。命は助かったけれど、仕事という生きがいを取られたような気がして、絶望的な気分になりました」
順調に出世するも管理職は肌に合わず…
激務をこなすうちに脳梗塞で入院
1
2
複数媒体で執筆中のサラリーマンライター。ファミレスでも美味しい鰻を出すライターを目指している。得意分野は社会、スポーツ、将棋など
記事一覧へ
記事一覧へ
【関連キーワードから記事を探す】
この記者は、他にもこんな記事を書いています