「人格を作り変える」ブラック企業の新人研修
毎年、大勢の新人が入ってきては、辞めていく。
先物取引、金やプラチナなどの貴金属のペーパー商法、マンション投資など、リテール系金融業界はいつの時代でも人の出入りが激しく、社員を使い捨てることが常態となっている会社をしばしば見かける。
だが、実際は5年、新人は辞めることを簡単には許されない。
「人を採用するにも、採用してから後も、カネはかかるでしょう。研修ひとつとってもカネがかかる。その分、もとを取ってからでないと。辞める権利が出来るのは」
こう語るのは、マンション投資会社社長・岩本宏太郎氏(仮名・50歳)だ。
新人が5年は辞めることを許されないのには理由がある。
「新人の指導係には、入社5年目から7・8年目の中間管理職候補を充てる。で、自分が受け持っている新人1人辞めれば、これは指導係の責任として人事評価に響く。だから彼らは、多少の無茶も厭わず、辞めたいという新人の引きとめにかかるというわけ」
しかし、この新人研修、並みの根性ではとても耐えられない過酷なものだ。
あらかじめ4つにグループ分けされた新人たちは、金融マンとしてのキホンのキである電話営業、テレアポを実地訓練を兼ねて行う。このアポの数を4グループで競う。
「1位なら、夕飯を摂り、風呂に入る権利を与える。最下位の4位は夕飯も風呂もなし。結果出してないのだから、何もなし、だ。2位は夕飯は食える。3位も夕飯は食える。でも4位のグループがペナルティとして食えなかった夕飯も残さず平らげてもらう」
こうした研修で、この前までごく普通の学生だった新人は、色恋営業、枕営業までも平気で行う、上司の意のままに動く“兵隊”へと化す。
労働問題に詳しい、ジャーナリストの秋山謙一郎氏が語る。
「日々、競争を強いて、ペナルティの恐怖に晒す。これらはすべて新興宗教が信者を洗脳する時の手口と同じ。ブラック度高い企業ほど、こうした手法を用いて新人を人格面から作り変えていきます。人を疑うことを知らない真面目な人ほどハマってしまう」
今年3月に秋山氏が上梓した『ブラック企業経営者の本音』では、これまで見落とされがちだった経営サイドの思惑、従業員を型に嵌める戦慄の手口が、詳らかに描かれている。
今、勤めている企業がもしかしたらブラック企業ではないかと悩む人、間違ってブラック企業に勤めてしまった人に、是非、手に取って貰いたい一冊だ。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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『ブラック企業経営者の本音』 経営者サイドが明かした怖すぎる本音! ![]() |
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