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「言わなくてもわかる」は管理職の怠慢!わかりあうまで徹底的に話す【中日・谷繁兼任監督】

週刊SPA!連載<俺の職場に天才はいらない!> 谷繁元信選手兼任監督の管理職的独り言 ◆「言わなくてもわかる」は管理職の怠慢 わかりあうまで徹底的に話す!
<俺の職場に天才はいらない!>谷繁元信選手兼任監督

コミュニケーション不足はチームにとって何ひとついいことはない。きちんと話したことが交流戦以降の好調を呼んだのかもしれない

 交流戦は13勝10敗1分け、6月は10勝7敗1分け。チームは単独3位(6月30日現在)に浮上したけど、まだまだ上もいるしね。よく新聞やテレビなんかでは5割を一つの区切りみたいに書かれたりしてるけど、勝率5割が目標でもないから満足はしていない。それでも少しずつ手応えを感じながら前半の3か月が終わった。  実は兼任監督となってひと月ほど経過したとき、オレはある決定的なことに気づいたんだ。それは何か? その後チームはどうなったのか? 今回はそのことについて話そうと思う。  細かな状況は割愛するけど、ゴールデンウィーク序盤のある試合でミスが出た。プロという高いレベルで野球をしていると、誰にもわかる明らかなミスと、数字にも表れない見えないミスがある。そのミスは見えないミスではあったのだが、どう考えても腑に落ちないミスだった。正直、なんでこんな簡単なことができないのかなぁ……とさえ思った。  プロ野球とは言うなれば、野球界のトップクラスの選手が集うところ。そして彼らは皆、大の大人でもある。一軍のレギュラークラスともなればプライドだってある。ところがこの世界は、プライドだけで結果が残せるほど甘くないのも事実だ。  あるとき、オレはハッと気づいたんだ。プロ野球選手として20年以上やってきたオレは、もしかするとプロのレベルというものを過信していたのかもしれない……と。それは言わばプロとしてのオレの驕りとも言えるんだが……。オレは「プロ野球の一軍選手なんだから、これくらいはできるだろう、わかっているだろう」と思っていたんだが、実はこの考えは指導者として怠慢じゃないのかと。  この日を境に、オレは選手とのコミュニケーションを変えてみた。そのためにしたのは、まずオレの意識改革。「お前、プロだからそのくらいわかるだろ?」という考えをスッパリ捨てたんだ。そして、細かなことまですべて伝えて、やる前の準備からそのプレーをする意図まで、一からきちんと話をして指揮を執るようになったんだ。  するとどうだろう。チームは少しずつ歯車が噛み合ってきて、結果にも表れてきた。それが交流戦の結果に繋がったんだとオレは感じている。選手たちは、もともと才能はあるからプロ野球選手になれたわけだよ。でも、その才能を腐らせてしまうのは、もちろん本人の怠慢もあるかもしれない。だけど、じゃあ怠慢なままの選手を放っておいたのは誰?ってこと。それは指導する監督やコーチじゃないのかと。だから、オレは「言わなくてもわかる」から「言って聞かせる」や「話してわからせる」ことに、重きを置いたんだ。もちろん、最終的には言われなくてもやれるようになってほしい。そんな気持ちが根底にはあるんだけどね。  今のドラゴンズは、守備の要の荒木、打線の軸の平田をケガで欠いている。言わば「飛車角落ち」の状態だ。それでもチームの状態は上向いてきている。  ケガしてしまったものは仕方がない。今いるメンバーがこの状況をどう感じて乗り切るかが大事。現場を預かるオレとしても、ないものを嘆いてばかりじゃダメなんだ。今いるメンバーでベストの野球ができるように、『言わなくてもわかる』を改めて、とことん話しあいながら、後半戦に挑むつもりだ。 <今週の谷繁論> 当たり前のことができないのは、指導者がしっかり伝えていないからかもしれない
谷繁元信選手兼任監督

谷繁元信

※週刊SPA!7/15発売号の連載コラムでは「プロの監督に求められているもの」について語っている 【谷繁元信】 ’70年、広島県生まれ。昨秋、日本プロ野球界では7年ぶりの選手兼任監督としてドラゴンズの監督に就任。野村克也氏が持つ出場試合記録更新の期待もかかる 撮影/Toshitaka Horiba 渡辺秀之 構成/小島克典
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