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中日・谷繁兼任監督「犯したミスを仕方ないで済ませていてはプロにはなれない」

週刊SPA!連載<俺の職場に天才はいらない!> 谷繁元信選手兼任監督の管理職的独り言 ◆衝撃の叱咤。大矢さんからの“愛の一喝”で芽生えた自覚
谷繁元信

大野雄大投手とマウンドで話す谷繁元信兼任監督。時に厳しい言葉で選手を引っ張っていく手腕には球界が注目する(写真/産経新聞社)

 ベンチを預かる監督として、ボールを受ける捕手として、チームの軸となるエース格の投手が不在だと非常にツラい。今年は吉見、浅尾、岩瀬と抜け、一筋縄じゃいかない状況になっている。そんなわけで「お前には頑張ってもらわないといけないぞ」と何人かの若手投手には期待をしている。期待をしている以上、間違ったことやミスがあればカミナリを落とす。  監督になってからいろんな選手にカミナリを落としているよ。前にもこのコラムで書いたとおり、「わかっているだろう」ではダメなんだよ。それは相手が岩瀬であれ、誰であれ、同じこと。だからオレは誰に対しても平等に接している。間違いや、ミスを選手にしっかりとわからせることも監督の仕事なんだ。  8月22日の巨人戦に先発した大野(雄大)にオレはカミナリを落とした。その日、マスクを被っていたオレはピンチの場面でたまらずマウンドに行き、かなり厳しい口調で叱咤した。マスクをしていたからマウンドに集まった内野手だけにしかわからないと思っていたら、翌日、スポーツ紙のカメラマンからすかさず突っ込まれたよ。「監督、昨日はものすごい形相で大野を叱ってましたね」ってね(笑)。  打たれる、抑えるはお互いプロ同士の勝負だから、仕方がないこと。それは野球の一部。だけど防げるミスは全力で防ぐのもプロとして求められること。これはオレがかつての指揮官から学んだことだ。  横浜時代、オレが「よし! レギュラーを掴んだぞ!」と実感したのは’96年のシーズンからのこと。今でも覚えてるんだけど、その年のある試合中、大矢監督(当時)からすごい勢いで大目玉を喰らったことがある。その出来事が、オレをもう一段上の野球選手に押し上げてくれた。  その日は確かジャイアンツとの試合だった。オレはあるミスを犯してしまい、結果として失点に繋がってしまった。もちろん、ミスを犯したことはオレ自身もわかっていたから、ベンチに戻ったら叱られるんだろうなぁと思いながら引き揚げたんだ。だけど、オレを待っていたのは叱られるというレベルを超えた出来事だった。  ベンチに引き揚げてきたオレを監督はベンチ裏に呼んだ。あ~また叱られるんだろうなぁ……と思いながら裏に行くと、そこには鬼の形相をおした大矢監督がいた。それからはもう、叱られるってレベルじゃなかった。あの頃はまだ大矢さんも若かったから、叱るときのパワーもハンパないんだ。大人になってあんなに叱られたのは、後にも先にもあのときくらいだったよ(苦笑)。  一つ言えるのはあの一喝で、オレはレギュラーとしての自覚を持てたし、プロとしてミスすることの恥ずかしさ、そしてキャッチャーとしての責任について深く考えさせられたのも事実なんだ。  20年近くたった今も、あの日のことは鮮明に覚えている。大矢さんからもらったあの“喝”のおかげで、今のオレがあるのかもしれない……とすら思っている。
谷繁元信

谷繁元信

<今週の谷繁論> ミスは仕方ない。だが、犯したミスを仕方ないで済ませていてはプロにはなれない! ※週刊SPA!9/9発売号の連載コラムでは“記録の話”について語っている 【谷繁元信】 ’70年、広島県生まれ。昨秋、日本プロ野球界では7年ぶりの選手兼任監督としてドラゴンズの監督に就任。野村克也氏が持つ出場試合記録更新の期待もかかる 撮影/Toshitaka Horiba 渡辺秀之 構成/小島克典
週刊SPA!9/16・23合併号(9/9発売)

表紙の人/TOKIO

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