身内の不祥事情報を売って私腹を肥やす銀行マン――“脱法サラリーマン”の生態
―[[脱法サラリーマン]の悪知恵白書]―
1人の出入り業者によって持ち出された個人情報により、200億円もの損害を被ったベネッセコーポレーションを引き合いに出すまでもなく、いつの世にも、どんな組織にも不良社員は存在する。個人情報や企業情報の漏洩、商品の横流し、収賄にキックバック……その手口はさまざまだ。サラリーマンとして越えてはいけないラインを軽々とまたぐ“脱法社員”の生態に迫った!
◆不祥事情報を企業舎弟に売って私腹を肥やす
ある中堅銀行で人事部、総務部と渡り歩き、現在は行員の調査などを管轄する部署に勤務する山口高志氏(仮名・46歳)。行員の不祥事を扱う立場を悪用し、これまでさまざまな脱法行為に手を染めてきた。
「簡単にいえば恐喝ですが、自分が直接手を下すわけじゃない」
懇意にしている調査会社の人間に情報を流し、ユスリをかけ、金が取れればバックを受ける──構図は実にシンプルだ。
「半沢直樹じゃないですけど、銀行員っていうのは常にライバル行員の失点を探していて、敵を追い落とすためなら、ちょっとしたことでも上にチクる習性がある。私のところにも絶えずさまざまな情報が上がってきます。そのなかで確実なネタを選んで、調査会社に流すわけです。実家が資産家だったり、親が企業のお偉いさんをしている行員の不祥事は特にカネになる。ネタは不倫がおいしい。彼らは世間体を非常に気にしますから、いとも簡単にカネでもみ消そうとします」
山口氏のいう調査会社とは、某広域暴力団とつながる企業舎弟。
「以前、総務部にいて、トラブル処理を担当していたときにできた縁ですね。いわゆる反社です」
情報を裏社会に売ることで、山口氏の懐には年に300万~500万円が転がりこむという。
「上層部のネタなどは事件化する恐れがあるので触らない。程よいネタで細々と、がポイントですか」
行内にアウトロー勢力と結託した行員がいては、一般行員たちはたまらないだろう。
【銀行マン】
中堅銀行調査担当部署。一般行員の個人情報を独自にファイリング。不祥事ネタを暴力団関係者に流し、恐喝をアシスト。恐喝した金額の3割から5割を報酬として受け取っている。副業年収300万~500万円
<中村得郎弁護士の見解>
本人は犯行を実行してはいませんが、恐喝という犯罪行為を共同で実行している事実、またその意思もあるため、恐喝罪の共謀共同正犯が成立します。さらに、ヤクザを使っているということもあり、執行猶予が認められることはまずないでしょう
<推定される判決>
懲役3年/執行猶予なし
【中村得郎弁護士】
東京新宿法律事務所代表。労働問題、遺言、相続、離婚など、個人の法律問題を主に取り扱う。http://www.shinjuku-law.jp/
※推定される量刑はあくまでも目安であり、その他の情状事実によって大きく異なります。
イラスト/西アズナブル
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