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路上の知恵「ホームレス人生相談」が話題に

 駅前や街角で、『THE BIG ISSUE』(ビッグイシュー)と書かれた雑誌を手売りしているのを見たことがある人は多いのでは。この雑誌を売っているのは、ホームレスの状態にある人で、1冊300円の雑誌を売るごとに160円が販売者の収入となり、この仕事をステップとして自立につなげるために生まれた。03年よりスタートし、現在は北海道から鹿児島まで14都道府県で販売されており、硬派な記事からエンタメ系まで、充実した内容に愛読者も増えている。
世界一あたたかい人生相談

「世界一あたたかい人生相談」(講談社文庫)は、枝元なほみの「悩みに効く料理」も掲載 定価:本体762円(税別)

 そんな『ビッグイシュー』の人気連載「ホームレス人生相談」が、『世界一あたたかい人生相談』としてビッグイシューより書籍化されたのが08年。それから3年、今年6月に講談社より文庫化され、その人生相談に対する販売者の回答内容がスゴい!とジワジワと話題になっているのをご存じだろうか。  たとえば、「えなり似の僕、笑われることに耐えられません」(30歳/男性)という相談。これに対し、回答者のTさんは、「これはえなりくんに失礼やなぁ」と軽く相談者をいさめ、そのあとに自分にも幼い頃、背の低いコンプレックスがあって「足引っ張ってみたり、牛乳飲みすぎて下痢したわ」などと同じ目線(というよりやや下から)になり、「本人が思うほど他人は気にしていないし、顔を見て『笑われている』んじゃなくて、親しみをこめて『笑ってる』んとちゃう?」とフォロー、最後は「この悩みは年取ったら笑い話になるわ。30代なら30代なりにやることやってたら『えーなり』になりますわ」とオチまでつけて回答するのだ。ほかにも、「阪神ファンの僕、巨人ファンの上司、関係をよくするには……」や「結婚を約束していた彼を事故で亡くしました」など、コンプレックス・人間関係・恋愛・仕事の悩みに関して、ときに真摯に、ときにユーモアをまじえて答えられており、ぜひとも一読してほしい本に仕上げられている。  そこで、ビッグイシュー日本の水越洋子編集長に話を伺った。 ――この連載がスタートするきっかけはどんなものだったのでしょうか? 「はじめは、販売者の方が路上で雑誌を売っているときに、お客さんから身の上相談をよく受けるということを聞いていました。また、読者の方からも『ホームレスが答える人生相談をぜひ読んでみたい』という声もあり、自然発生的に始まったんです。今では相談は、販売者やスタッフによせられたもののほか、はがきやメールでもいただいております」 ――よくある人生相談と違い、思わず吹き出したくなったり、ときにホロッときたりと心に沁みる回答が多いです。
ビッグイシュー

最新号の表紙は斉藤和義

「そうですね。ふつうだったら、模範解答みたいにつまらない回答になってしまうかもしれませんが(笑)。この本の回答者は、専門家や先生、人生の先輩ではないので、相談者に指導したり正しい道を指し示そうという気持ちより、相手のことを想像しながら、場合によっては自分の状況もままならないなか、どん底の体験を経験した人ならではの視点から答えているところが、読者に伝わるのかもしれません」  『世界一あたたかい人生相談』は、販売者から買うほか(在庫切れの場合があります)、書店でも購入可能。正解のない相談に、目からウロコの秀逸な返しが光る。 ●ビッグイシュー日本の最新情報は、コチラからチェック⇒http://www.bigissue.jp/ 取材・文/おはつ
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