これまでフェラーリを2000台以上売った男として業界では有名な榎本修氏(通称エノテン)。店にはズラリとフェラーリが並んでいるがどれも売約済み。氏からフェラーリを買いたいと庶民派からセレブまで、オーナー&オーナー予備軍が待ちわびているという。そんなミスター・フェラーリも実生活はベンツ三昧。果たして氏が選ぶ最良の1台は?
MJブロンディ=文 Text by Shimizu Souichi
実生活はベンツ三昧。フェラーリを2000台以上売った男が選ぶ最良のベンツが決定!
昨年は中古フェラーリ業界にとって激動の年だった。春先からテスタロッサや328、チャレンジストラダーレなどのちょい古めや限定モデルに大量の外国人買いが入って暴騰。8月のチャイナショック以降は外国人買いが止まって下落した。横浜市で中古フェラーリ専門店「コーナーストーンズ」を営む榎本修氏も、「おかげでいろいろ大変でした。やっぱり相場は安定してくれてたほうがいいです!」と語る。
ところで中古フェラーリ屋の社長は、普段どんなクルマに乗っているのか?
「中古ベンツです。やっぱり経営者にはベンツが最高!と最近改めて思うようになりました」(榎本)
これまで足グルマとして中古ベンツを多数乗り継いできた榎本氏だが、東日本大震災後は、「日本のために石油は一滴たりともムダにできない」とマツダ・デミオに買い替え。それでフェラーリ売ってていいのか!?と突っ込む向きもあろうが、フェラーリは乗るより眺めるクルマゆえ、石油はあまり食わないのである。
約3年間、2台のデミオを乗り継いだ榎本氏だったが、2年前もう日本は大丈夫と中古ベンツに復帰した。現在はE350クーペとCL600の2台の中古ベンツを乗り回している。本職はフェラーリ屋だが実生活では中古ベンツマイスター。そんな榎本氏に最新のベンツ5台の味見をしてもらった。
まず新型G550。女性にも大人気の「ゲレンデ」である。当初「Gクラスは軍用車。乗り心地が最悪なので好きじゃないです」と言っていた榎本氏だが、最新モデルはどうか。
「これはぜんぜん違いますね。乗り心地がよく見晴らしもいいしカッコもいい。加速も十分でブレーキも効く。高速ではちょっとフラフラしますが、さすがベンツです!」(同)
榎本氏が言う「乗り心地の悪いGクラス」は20世紀製のモデル。ベンツもフェラーリ同様日進月歩なのである。
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『G550 1470万円』最新Gクラスの乗り心地にビックリ! 最強のモテグルマGクラスは、登場以来、見た目はあんまり変わってませんが、中身はずいぶん変わっていて、旧型Gクラスしか乗ったことがなかったエノテンもビックリ! 普通に走れることに感動した
続いて、フェラーリのライバルでもあるAMG GT S。
「ちょっとナメてたんですけど、これは凄いです。フェラーリどころかランボルギーニ・アヴェンタドールと互角くらいの加速です。ビックリしました!」
最高出力は510馬力しかなく、600~750馬力を誇るフェラーリやランボにかなわないが、さすが4リッターV8ツインターボ。低い回転からダンプ並みのトルクが湧き出して狂ったように速く感じる。お値段も1840万円とフェラーリよりぐっと安い。フル加速時の安心感の高さもさすがベンツである。
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『AMG GT S 1840万円』ナメてゴメン!けっこう速かった。試乗後いったいこのクルマは何馬力なんだ!?と確認したAMG GT Sが、たった510馬力だとわかって驚愕! 安くて速くて安心のクラシアンのようなスーパーカーに、さすがベンツと脱帽しました
では一番お安いAクラスは?
「うーん、デミオよりいいです。さすがベンツ、すべてが少しずつデミオよりしっかりしてます!」
最安296万円からのAクラスは、榎本氏が愛車にしていた先代デミオを確実に上回っているとのことである。さすがベンツ。
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『A180 Edition Green 385万円』すべてが少しずつデミオよりGood!先代の鈍重な印象から一変。スポーティになった現行Aクラス。庶民派ベンツですが、それでもベンツ。デミオに後塵を拝することはありません。ちなみに、こちらは30台限定の特別なAクラスです
そしていよいよ真打ち、経営者の憧れ・マイバッハだ。
「これ、Sクラスと形が同じですね。ホントにマイバッハですか?」
ロールスロイスに対抗して誕生した先代マイバッハは、採算が取れずに消滅。Sクラスのゴージャス版に格下げになったのである。
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『MAYBACH S600 2600万円』写真左のマイバッハは6リッターV12エンジンを搭載。お安い4.7リッターV8モデル(2200万円)も。右の『S300h 998万円』は最安のSクラス。ちなみにAMG S65ロングはマイバッハよりも高く、お値段は3264万円です
「それは残念だなあ。でもこれで十分です。シャンパングラスも冷蔵庫もついてますし。やっぱりベンツは別格ですね! 僕はロールスロイスより断然好きです」
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やっぱり経営者なら足グルマはベンツが最高!
榎本氏によると、ロールスロイスでお店にお越しになるお客様は、どんな背景をお持ちなのか見当もつかず、たいそう気を使うという。「こっち(マイバッハ)のほうが、ぜんぜん堅気な感じで安心です!」とのことだった。では最後に、自分で買うならどれを選ぶ?
榎本氏&MJ
「やっぱりSクラスですね。ディーゼルハイブリッドのS300hで十分でした。買うならもちろん中古です(笑)」
自身が中古車屋なだけに、中古にこだわる榎本氏であった。
【結論】
フェラーリ屋も普段はベンツがベストという。なぜならベンツは気を使わなくていいから。高級だけど究極の道具なのだ。そしてデカいセダン系ベンツは新車より断然中古がイイ。なぜって値段がガクッっと安いから!
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『
そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『
首都高速の謎』『
高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中