カーライフ

安全なのはどっちか? 12年前のベンツとイマドキの軽自動車

 クルマ好きの腕時計投資家、斉藤由貴生です。  私は先日、友人にメルセデス・ベンツAクラスをプレゼントしたのですが、それを選んだ大きな理由が「安全性」。ベンツは昔から「安全」というイメージがありますが、実際の安全性もその名声に負けないものがあると思います。
W169 A170エレガンス

2代目Aクラス(W169)A170エレガンス

 クルマの安全性能が日本でも重視されるようになったといえるのは90年代中盤ですが、メルセデス・ベンツはそれよりも遥かに前の時代からクルマの安全性を追求していました。  そして、そういった安全性を重視するという姿勢は、もちろん今でもあるわけで、第三者のテスト機関が実施しない部分にまで、メルセデスの安全性に対する配慮があると思います。
ベンツAクラス

ベンツAクラスは、2トン近いSクラスに側面衝突されること想定している(YouTube「THE LEGEND A CLASS W169」より)

 例えば、ベンツ以外のドイツ製高級車に乗っていると、前に遅いクルマがいる場合にイライラして「早く抜きたい」という気持ちになってしまいますが、ベンツでは時速40kmで走っていてもなんとなく心地よく感じ、不思議とイライラしないのです。  このような感覚はテストで評価しづらいといえますが、そういった部分まで追求しているのがベンツの良さの1つだといえるでしょう。

12年前のAクラスと最新の軽自動車の安全性

 私が友人にプレゼントしたAクラスは2008年式。つまり12年前のクルマです。いくらベンツといえども、「最新のクルマと比べると軽自動車よりも安全性は劣るのではないか?」と疑問に思う方もいるでしょう。しかし、私は12年前のAクラスは、最新型の軽自動車にも負けないぐらい安全だと思います。  このモデルのAクラスがデビューしたのは2005年ですが、当時の衝突試験の様子は現在でもWebで公開されています。当時テストを行ったユーロNCAPは、そのころからすでに「サイドポールテスト」などを実施。このAクラスにはカーテンエアバッグが備わっており、もちろんサイドポールテストもクリアしているわけです。
ベンツAクラス

2005年の段階でユーロNCAPはサイドポールテストを実施している(YouTube「Euro NCAP | Mercedes Benz A Class | 2005 | Crash test」より)

 次に、最新型軽自動車の安全性ですが、「年々進化している」といわれる軽自動車の安全性は、以前よりも高まっているといわれています。また、最近では中型セダン並のスコアを叩き出している車種もあるため、「軽自動車の安全性は高くない」という意見は、単なるメルセデス好きの感情論と受け取られるかもしれません。  もちろん、私も進化している軽自動車の安全性能は認めていますが、基本的に日本国内のみで売られ走っているクルマのため、安全性のテストが日本の基準でしか行われていないという点が気になります。つまり軽自動車の安全性の根拠は、日本のJNCAPが行ったテスト結果から導き出されたものなのです。  日本で走るんだから、それで十分だろうと思われるかもしれませんが、ここには大きな問題があるといえます。

テスト内容がユーロNCAPに比べて貧弱なJNCAP

 現在JNCAPは、フルラップ、オフセットの前面衝突、側面衝突、頸部保護性能(運転席・助手席)などを行っていますが、これらテスト内容は、ユーロNCAP、アメリカのIIHSと比べて貧弱だといわざるを得ません。  例えば、平成29年度までの側面衝突試験では、台車の重量が950kgでした。ユーロNCAPは1300kg、IIHSは1500kg相当である一方、日本のそれはずいぶん軽かったのです。平成29年以降においての試験では、JNCAPでも1300kgの台車に変更されていますが、諸外国に比べてかなり遅れていたといえます。
独立行政法人自動車事故対策機構

独立行政法人自動車事故対策機構のHPには、JNCAPで、いつどんな試験を開始したのかが載っています

 また、ユーロNCAPが15年以上も前から行っているサイドポールテストについてはいまだ行われておらず、今のところ2025年度の「追加検討項目」に含まれているに過ぎないようです。  ちなみに韓国のKNCAPでは、すでにサイドポールが実施されています。
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国内専用車、特に軽自動車の安全性には疑問が残る
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1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

もう新品は買うな!もう新品は買うな!

もう大量消費、大量生産で無駄遣いをするのはやめよう


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