プロレスラーと結婚とフツーの幸せ――フミ斎藤のプロレス読本#021【ロード・ウォリアーズ編6】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
アメリカのプロレスラー――1990年代くらいまでの“男子”のプロレスラー――の多くは家庭生活については運が悪い。
比較的若くして結婚するかわりに、ほとんどのケースにおいて途中で“ギブアップ離婚”をしてしまう。ようするに、なかなかつづかないということである。
WWEと専属契約を交わし、チーム名をロード・ウォリアーズからLOD(リージョン・オブ・ドゥーム)に改名したころ、ホークが経験した離婚はすさまじかった。
ホークはなにがなんでもワイフがいちばんというタイプで、ツアー中にべつの土地でべつの女性と仲よくなったりすることなんて絶対といっていいほどないマジメな夫だったのに、裏切ったのは妻のほうだった。
ホークがほとんど家に帰れず、また子どももいなかったからなのか、こともあろうに彼女は地元で新しい彼氏をつくってしまった。そして、そういうシチュエーションがいつのまにか1年以上もつづいていた。
こんなエピソードがある。全米ツアー中だったホークがある晩、滞在先のホテルからミネアポリスの自宅に電話を入れると。深夜だというのに<通話中>のトーンが聴こえてきた。
何度かけなおしても話し中だったため、心配になったホークは近所に住んでいるブラッド・レイガンズのところに電話を入れ、自分の家のまわりを自動車で一周してきてくれるように頼んだ。
彼女の身になにかあったのだろうか。ホークは「10分後にもういちどかける」といって電話を切った。
パジャマの上からガウンを羽織ったレイガンズ先生が愛車の4WDに乗ってホークの自宅の前まで来ると、玄関横のウインドーからリビングルームの照明がもれていた。
よく見ると家じゅうの明かりがついているし、音楽が鳴っている。人もたくさんいるみたいだ。家のすぐ外側のストリートには、少なくとも15台くらいの自動車が停まっていた。どんちゃん騒ぎがはじまっていた。
それから10分後、再びレイガンズ先生の家に電話をかけてきたホークが、状況報告を受けて怒りまくったことはいうまでもない。
宴もたけなわにダンナから電話が入っちゃまずいから、電話のラインを壁からひっこ抜いてあっただけのはなしだった。でも、これだけだったらホークのワイフもそんなに悪くはない。ようするに、寂しかったのである。
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