アニマルの憂うつ=“伝説”のつづき――フミ斎藤のプロレス読本#023【ロード・ウォリアーズ編8】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
1992年
オプティミストoptimist(楽天家)とペシミストpessimist(悲観論者)のこんなおはなしがある。
ペシミストのセールスマンが、アフリカのある国にクツを売りにいった。まったく売れない。ペシミストが仲間のオプティミストに電話をかけた。
「てんでダメだ。この国の人たちはクツを履かない。見込みがない」
オプティミストはこう答えた。
「見込みは十分だ。その国の人たちはまだクツを履いていない」
物事をいいようにいいように考える人と、なんでも悪いように悪いように考えてしまう人たちのたとえばなしだ。どちらが正しくて、どちらが正しくないかを論じるものではない。
どういう視点に立ったとしても、けっきょくはいま自分が直面しているシチュエーションにどうにか対処していかなければならないことに変わりはない。
チェスのゲームだったら、どんなに戦況が苦しくても、とりあえずコマをひとつだけ前に進めておかなければならない。
ホークの進路――新日本プロレスと契約――が決まったことで、相棒のアニマルもこれからについて考えなければならなくなった。
リージョン・オブ・ドゥームは解散してしまったのだから、相棒という表現はもう適切ではないかもしれない。ホークがWWEを退団した時点で、ロード・ウォリアーズもその歴史に幕を降ろした。思い切ってそういうふうに理解したほうがすっきりする。
WWEのスタンスはこれとはちょっとちがっていた。ホークがいなくなると、コメティカットのアイディアマンたちはすぐに代役をこしらえようとした。
LODのキャスティングにはちょうどいい(と思われる)クラッシュをアニマルにくっつけて、ケース・スタディとしてヨーロッパ・ツアーに送り出した。
この代役プランはすぐに流れた。新しいパートナーとのコミュニケーションがどうにもしっくりこないと感じたアニマルは、弟のターミネーターを呼びよせてチームを再編成しようとしたが、このプランは首脳部から却下された。問題が解決しないまま時間ばかりが経過していった。
シングルプレーヤーに転向したアニマルは、コスチュームもタイツもLODのまま全米ツアーをつづけた。どんなにいままでどおりの試合をやろうとしても、観ているほうは――おそらく、やっているアニマル本人も――パートナーの不在を感じた。
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