更新日:2020年09月03日 10:16
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狙われた国の予算4兆円。持続化給付金を貪る悪徳マルチ

―[新型コロナ詐欺]―
 新型コロナで売り上げが落ちた個人事業主や中小企業の救済策として、大きな役割を果たす持続化給付金。すでに4兆円もの予算が組まれているが、濡れ手に粟と言わんばかりに貪る輩が後を絶たない。巧妙な手口を操る最前線を取材した。
持続化給付金を貪る悪徳マルチ

写真はイメージです

国民の血税をかすめ取る輩たちの最新手口とは?

 新型コロナウイルスの感染拡大による経済的影響を受けた小規模事業者への支援施策として、今年5月に始まった持続化給付金。売り上げが前年同月比で半分以下に減ってしまった場合、個人には最大100万円、中小企業には最大200万円が支払われるという制度なのだが、これが今、不埒な連中に食い物にされてしまっている。  8月26日、愛知県警は持続化給付金を騙し取ったとして3人を詐欺の疑いで逮捕した。容疑者たちは知人名義で申請を繰り返し、400件もの持続化給付金を申請。一人100万円とすれば、手にしたカネは総額で4億円となる。 「持続化給付金を受給するためには、前年より収入が半減している必要がありますが、確定申告で前年度分を水増ししたり、今年の収入を別口座に振り込ませて圧縮したりして困窮しているように見せかける手口が横行しています。給付のスピードを上げるため審査が厳密でないことを逆手に取った格好ですが、今後もこうした摘発は続くはず」(全国紙記者)

出資してしまったが最後、カネが出資者のもとに戻ってくることはない

 しかし、刑事事件となって表沙汰になるのは氷山の一角にすぎない。それどころか、持続化給付金を悪用した詐欺的な手口は洗練される一方だ。『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)を上梓した奥窪優木氏は話す。 「グレーゾーンのビジネスを手がける者にとって、持続化給付金は千載一遇のチャンス。無知な若者や主婦などを標的に申請を代行し、給付されたカネを巻き上げる手口は巧妙に練られ、広まっています。  たとえば仮想通貨関連のポンジスキームやマルチ商法の組織が、一般市民に持続化給付金の不正受給をそそのかしたうえで、給付金を振り込ませる。そして、その多くを自身らが手がける『投資案件』に出資させ、奪い取ってしまう。多くが高い配当や解約の自由を謳っていますが、出資してしまったが最後、カネが出資者のもとに戻ってくることは、まずありません」  週刊SPA!による独自取材でも、まさしく類似したケースが浮かび上がってきた。関西在住で、「L」なる業者が運営していたマルチ商法の勧誘を受けたという田口昌隆さん(仮名)は話す。 「クレジットカードでグレードの高い会員って、ホテルやレストランの予約代行をしてくれるじゃないですか。『L』はそうしたコンシェルジュ的なサービスを提供するという触れ込みで、お金を集めるマルチ商法。一口8万円の会員権を一人5口まで保有できるんですが、これを持っていると不労所得が得られると説いてくるんです。  それと同時に、マルチ商法なので、人を紹介すればした分だけ下からの報酬も入ってくる。関西や四国などの地方で3年くらい前から広まっており、華やかなカクテルパーティを開いたり、頻繁に飲み会を開いたりして会員を精力的に増やしています」
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「タダで未来に投資できる」悪魔のセールストークの中身
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1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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