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「トー横で取材した子が亡くなり、小説の結末を変えた」橋爪駿輝と呂布カルマが歌舞伎町の闇を考える

 トー横が社会問題になって5年以上が経過。トー横キッズたちの振る舞いに眉をひそめる向きは多いが、一方でトー横は〝そこにしかいられない子供たち〟が流れ着く居場所として機能している面もある。この異質なコミュニティをどう考えればよいのか。  トー横を舞台にした小説『愛しみに溺レル』を上梓した作家の橋爪駿輝氏とラッパーの呂布カルマ氏が、ここトー横で対面。忌憚なき意見を交わしてもらった。

居場所がなくても、子供がここに来ていい理由にはならない

トー横の深い闇

呂布カルマ氏(左)、橋爪駿輝氏(右)

橋爪:小説を書き終えてからしばらくぶりに来ました。平日の夕方でも人が集まってますね。 呂布:子供が歌舞伎町の中心ではしゃいでるなんて嘆かわしい。どうしても親目線で拒否反応が出てしまいます。 橋爪:呂布さんは、トー横に否定的なスタンスですか? 呂布:がっつり否定的です。  市販薬などのオーバードーズや売春が周知されてるのに、野放しの現状が続いてるなんてまったく理解できないです。橋爪さんはいかがですか? 橋爪:トー横の是非は一言では言えないのですが、小説の取材を通してわかったことは、若者にとって間違いなく〝一つの居場所〟になっているという事実。親との折り合いが悪いコや虐待されているコとか、複雑な家庭環境を持ったコが多かったんですよ。 呂布:家庭環境が複雑な点は、もう純粋に同情します。でも、居場所がないからって、子供が歌舞伎町に来てもいい理由にはならない。未成年がクラブに入れないのと同じで、大人の街にガキが来んな!って話です。

小説執筆中に、取材していた女のコが亡くなってしまった

トー横の深い闇橋爪:実は、小説を執筆していた途中で、取材で話を聞いていた女のコが亡くなってしまって。自殺だったらしく。本当にショックな出来事でしたし、救いなんてないんだなって痛感しました。これで救いがある話にするのは、不遜なんじゃないかと、結末を変えました。 呂布:単純に居場所がない若者が集まる場所自体は、あっていいと思うんです。それに、こういう退廃的なものに若者が憧れることって今に始まったことじゃない。  20年前にも池袋ウエストゲートパークみたいなカラーギャングが集まる場所はありました。でも、トー横は人が死んでるし、深刻な事情が隠れている気がします。 橋爪:そうですね。行政は真剣に取り組んでないなと感じます。東京オリンピック前に、ホームレスを一掃しようと施設に泊まらせて〝隠す〟ことをしていました。トー横の封鎖も同じで、根本的な解決にはならないです。
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「一回ハマるとなかなか抜け出せない」
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