伝統博打・手本引きの疑似体験イベントに潜入
タバコの紫煙が立ちこめるなか、強面の男たちが寄り添い、額に脂汗を浮かべながら遊戯に熱中する。勝負は一天地六の賽の目次第。無造作に積み上げられた札束が行き交うたびに、狂喜と怨嗟の声が薄暗い室内に響もす――。
東映の実録ヤクザシリーズではおなじみの賭場の光景。が、昔ながらの博徒が廃れつつある昨今の裏社会にあって、この手の賭場が開帳されることはほぼなくなったという。流行り廃りに関係なく、そもそも我々一般庶民にとっては無縁の場所ということもあり、「本当にそんな世界があるのか?」と、異次元の出来事のように捉えている方も多いことだろう。もちろん、記者もその一人だ。旅行ガイド本を見ただけではその国に旅行したことにならないのと同じで、自らが体験することなしに、その世界観を知ることはできない。そんな折、日本伝統博徒である手本引きの再現イベントが実施されることを知った。主催するのは、東京・秋葉原にあるアミューズメントカジノ店「アキバギルド」。早速、同店へと向かった。
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=643805
そう、今回の手本引きイベントで胴を務めるのはすべて、普段はメイドの女子ディーラーたち。「あれ、どこの姐でっか? えぇ胴引きますなぁ」などと、来ているお客さんたちも日本酒を飲みながら、『極道の妻たち』のような台詞をつぶやきつつ世界観に浸っている。疑似ゲームとはいえ、女のコたちとの真剣な腹の探り合いは熱くなりそう……ということで記者も挑戦してみることに。
手渡された15万円をどこまで増やせるか? というのが今回のルール。すでに150万円にまで増やしている人もいるから恐ろしいが、まずはヤマポン(3点賭けの一種。本命の数字だと2.8倍が戻り、抑えの2点がくれば、「種」といってチャラとなる)で1万円ずつを様子見。増えたり減ったりを繰り返しつつ、勝機が見える。
記者の見たところ、今回の胴の傾向として、目木(出目表)の数字の並びがいいところを崩すような札を選んでることに気付いたのだ。そのときの出目は左から6、3、4、5、1、2。この理論でいくと本命は「三間の4」!
胴が繰札を布に隠すと同時に、「張った、張った!」という合力の威勢のいいかけ声。その熱狂につられるように、全額をスイチで4に賭ける。「4、4、4」と念じる。胴の指先がゆらりと動き、目木の4あたりで静止する。「そうだ、4、4だ、飛び込んでこい!」と胴の目をジッと見つめるが……「根の6ッ」という無情の響き。落胆のあまり、その場でずっこけてしまった。
結果は散々だったが、お金を賭けなくても、ゲームの醍醐味、昔ながらの賭場の雰囲気は十分に味わうことができた。同店では、この手の不定期イベントも3か月に1度の割合で開催しているとのことなので、遊んでみたいという人は、お店のホームページをチェックしてほしい。 <取材・文/スギナミ>
【アキバギルド】
住:東京都千代田区外神田3-15-7第二丸信ビル8階
電:03-3255-7155
営:15:00~22:30(土日祝は13:00~)
料:サービス料金700円(ドリンク付き)メイド指名2000円。
各種カジノゲームが楽しめる同店の情報は http://www.akibacc.com/
カジノテーブルが取り除かれた店内の一角には畳が敷かれ、コの字型に白い布をかぶせた盆ゴザが用意されている。普段はメイド服のディーラーたちもこの日は着物で、白いサラシに片肌出しという本格衣装。手本引きには目木、繰り札、張り札などの専用道具が必須だが、この日のために専門の職人さんに作ってもらったという凝りようだ。写真を見れば、ズク(札束)が盆を覆い尽くす様子が見てとれるが、こちらのお札はもちろん偽札。小道具の演出ひとつで、本場の雰囲気を味わうことができる。
1から6までの数字が書かれた6枚の札から親が任意の1枚を選択。子は「親が何を選んだか?」を読み、1点から4点までの様々な張り方で勝負する――というのが、手本引きの簡単なルール説明。1点賭けの“スイチ”は「賭けたお金の4.5倍が戻ってくる」とわかりやすいが、2点賭け以上は張り札の置き方や賭ける札束を置く位置などを変えることで配当が違う。そのバリエーションは10種類以上ある(なかには懸け札をナナメに置いたり、重ねて置くマニアックなものもある)から混乱するが、その難解さも玄人に好まれる理由かもしれない。
「映画の女優さんの演技を見たりして、胴(親)の立ち振る舞いについては研究しました。表情は変えずに1点を見つめる感じですね。繰り札を選ぶ基準ですか? 目木(胴の前に並ぶ、出目表のようなもの。直近の出目から根→小戻→三間→四間→古付→大戻と並び、繰り札を開けるときには『古付の3』などと呼ぶ)の並びだったり、簡単な算数だったり。でも、何回も連続で読みを的中されたときには、『あ、私が考えてること、見抜かれちゃってる?』ってドキドキします」(みやひ)
◆緋牡丹博徒 手本引き勝負! 美人姐たちが貫禄の胴を披露
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ