地震予知は動物で!? 危機感強い行政機関が試行錯誤
「ナマズが暴れると地震が起きる」などというように、「動物が異常な行動を取ると地震が起きる」ということは古来から言われてきた。
南海トラフの巨大地震について、これまでの想定を大きく超える被害予測が発表され、各自治体が防災対策の見直しと検討が迫られる中、そんな動物たちの異常行動を地震の予兆として観測しようという動きが出始めている。(4月6日付朝日新聞デジタル「動物の変な動きは地震前兆? 高知・須崎、情報提供へ」)
「防災対策の勉強会の中で、講師の方から地下水の変動、動物の異常行動と地震予知の話があったのは事実ですが、参考程度の話題でした。まだ具体的な対策や方針までは決まっていません。5月にまた勉強会を行う予定なので、広く総合的に検討していきます」(高知県須崎市・地震防災課)
しかし、地震前の動物の異常行動や地下水位の変動などは、地震雲や地震前に観測されるという発光現象など同じく「宏観(こうかん)異常現象」と呼ばれるもの。クジラの漂着や魚の大量死、雲の形や月の色が地震に絡んで話題になっているのでご存知の方も多いだろう。しかしながら、これらの現象は、再現性が乏しく定量的な観測が難しいため、いまだ科学的な因果関係があるか解明されていないのが現状だ。
すでに過去5年分の宏観異常現象の受け付けと公開を行う静岡県の静岡県地震防災センターに、宏観異常現象データ収集と地震予測の現状について聞いてみた。
「5年ほど前、このセンターに研究機関があったころ宏観異常現象も少し調べた事があり、その名残で今も宏観異常現象の受付と公開を行っています。ただ、もう特に研究はしていません。年に数回しか無い相談なので、これで地震を判断するのは難しいですね。地震の後には多少増えましたが、情報というよりも不安の声として受け止めています。今後も情報の受付と公開は続けていく予定ですが、警告などの意味ではありません」(静岡県・地震防災センター)
定量的な観測の難しさや、無責任な口コミなども多く、宏観異常現象を活用した地震予知にはまだまだ問題は多く、実際にまだ予知に役立つとは言いがたいのが現状。しかしながら、被害が大きいと予想される地域の自治体にとっては、科学的根拠が確立していないとはいえ藁にも縋りたくなるというもの。可能な範囲で現象を捉え、科学的、統計的なアプローチから研究を行っている動きも必要だ。これらの取り組みとデータの蓄積が、宏観異常現象の科学的根拠確立につながっていくことを期待したい。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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