安倍昭恵首相夫人「防潮堤建設」に疑問
震災直後から被災地を訪れ、現地のナマの声を聞き続けている安倍昭恵首相夫人。昨年末から「防潮堤建設の見直し」についても積極的に発言を行っている。被災地には今、何が必要なのか? 震災復興はどう進めればいいのか? 政治家以上に被災地の思いを知る昭恵夫人に、震災復興について語ってもらった。
――最近、防潮堤の見直しについて積極的に発言していますが、そのきっかけとなったのは?
週刊SPA!3/11発売号では安倍昭恵首相夫人の緊急インタビューを掲載。防潮堤の見直しや復興のありかた、そして自身の決意について大いに語ってもらった。
【安倍昭恵氏】
‘62年生まれ。’87年に安倍晋三氏と結婚。「アッキー」の愛称で呼ばれる。東日本大震災直後から精力的に被災地を訪問し、地元の人々の声を聞き続けている。著書に『安倍昭恵の日本のおいしいものを届けたい!私がUZUを始めた理由』(世界文化社)など
<聞き手/高坂勝 まとめ/北村土龍 撮影/安田菜津紀>
安倍昭恵(以下、安倍):陸前高田市を訪問した際、自動車学校社長の田村さんという方のお宅に泊めていただいたとき、朝ごはんを食べながら社長の奥さんから防潮堤の話を初めて聞きました。「海も見えなくなっちゃうし、もっといい方法があればいいのにね」と。それが心のどこかに引っかかっていて。
その後、現地に行っていろいろ話を聞いてみると、防潮堤に反対している人たちがたくさんいることがわかりました。でも、多くの人は声を上げたくても上げられなかったり、説明すら受けていなかったり。8000億円という莫大なお金を、本当にその防潮堤に使っていいんだろうかと。
――現地でどんな人たちの話を聞いたのですか?
安倍:私は地元の人たちの意見をできるだけ聞こうとしました。自治体の首長さんは「防潮堤建設について、地元住民の要望があった」と言うんですが、そういう要望を出している人というのは地元の有力者が中心。特に若者たちの間では「防潮堤はいらない」という意見が多かった。「この町は海があってこそ。海が壊された町には住みたくない」と言っている。そんな若者たちは説明会には参加していないし、意見を聞かれたこともないでしょう。でも本来は、彼らが将来背負っていかなくてはいけないもの。彼らの意見を無視するわけにはいきません。
――その結果、防潮堤は見直したほうがいいとの結論に達したと。
安倍:私は防潮堤に全面反対しているわけではないんです。都市部で海の近くに住宅が密集していて、移転も簡単にできない場所には、防潮堤が必要だと思います。でも人口が少なくて漁業が盛んで、美しい海岸のあるような場所には、必ずしも防潮堤を作らなくてもいいのでは……と。避難拠点や避難路を確保するとか、かさ上げするとか、津波対策はほかにもいろいろありますし。海と陸が分断されることで、多くの弊害が生まれます。漁業にも生態系にも影響が出るでしょう。その点は慎重に進めなければならないと思います。
――しかし実際には、ほとんどの自治体が防潮堤建設を急速に進めようとしています。
安倍:仕方がない面もあります。予算がつくのであれば、じゃあそれで住民の安全を守りたいと思うのは行政として当然のこと。問題なのは「防潮堤をとにかく造らないと復興ができない」とされている点です。必要な復興事業は地域ごとに違うのに、防潮堤や復興道路にしかお金が出ない。いまだに仮設住宅から出られない人がたくさんいるし、ハード面ばかりで、ソフト面による復興は軽視されています。それぞれの自治体が、自分で復興予算の使い道を決められればいいのですが。
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