安倍昭恵首相夫人「防潮堤建設」に疑問
震災直後から被災地を訪れ、現地のナマの声を聞き続けている安倍昭恵首相夫人。昨年末から「防潮堤建設の見直し」についても積極的に発言を行っている。被災地には今、何が必要なのか? 震災復興はどう進めればいいのか? 政治家以上に被災地の思いを知る昭恵夫人に、震災復興について語ってもらった。
――最近、防潮堤の見直しについて積極的に発言していますが、そのきっかけとなったのは?
安倍昭恵(以下、安倍):陸前高田市を訪問した際、自動車学校社長の田村さんという方のお宅に泊めていただいたとき、朝ごはんを食べながら社長の奥さんから防潮堤の話を初めて聞きました。「海も見えなくなっちゃうし、もっといい方法があればいいのにね」と。それが心のどこかに引っかかっていて。
その後、現地に行っていろいろ話を聞いてみると、防潮堤に反対している人たちがたくさんいることがわかりました。でも、多くの人は声を上げたくても上げられなかったり、説明すら受けていなかったり。8000億円という莫大なお金を、本当にその防潮堤に使っていいんだろうかと。
――現地でどんな人たちの話を聞いたのですか?
安倍:私は地元の人たちの意見をできるだけ聞こうとしました。自治体の首長さんは「防潮堤建設について、地元住民の要望があった」と言うんですが、そういう要望を出している人というのは地元の有力者が中心。特に若者たちの間では「防潮堤はいらない」という意見が多かった。「この町は海があってこそ。海が壊された町には住みたくない」と言っている。そんな若者たちは説明会には参加していないし、意見を聞かれたこともないでしょう。でも本来は、彼らが将来背負っていかなくてはいけないもの。彼らの意見を無視するわけにはいきません。
――その結果、防潮堤は見直したほうがいいとの結論に達したと。
安倍:私は防潮堤に全面反対しているわけではないんです。都市部で海の近くに住宅が密集していて、移転も簡単にできない場所には、防潮堤が必要だと思います。でも人口が少なくて漁業が盛んで、美しい海岸のあるような場所には、必ずしも防潮堤を作らなくてもいいのでは……と。避難拠点や避難路を確保するとか、かさ上げするとか、津波対策はほかにもいろいろありますし。海と陸が分断されることで、多くの弊害が生まれます。漁業にも生態系にも影響が出るでしょう。その点は慎重に進めなければならないと思います。
――しかし実際には、ほとんどの自治体が防潮堤建設を急速に進めようとしています。
安倍:仕方がない面もあります。予算がつくのであれば、じゃあそれで住民の安全を守りたいと思うのは行政として当然のこと。問題なのは「防潮堤をとにかく造らないと復興ができない」とされている点です。必要な復興事業は地域ごとに違うのに、防潮堤や復興道路にしかお金が出ない。いまだに仮設住宅から出られない人がたくさんいるし、ハード面ばかりで、ソフト面による復興は軽視されています。それぞれの自治体が、自分で復興予算の使い道を決められればいいのですが。
現在発売中の週刊SPA!3/11発売号では安倍昭恵首相夫人の緊急インタビューを掲載。防潮堤の見直しや復興のありかた、そして自身の決意について大いに語ってもらった。
【安倍昭恵氏】
‘62年生まれ。’87年に安倍晋三氏と結婚。「アッキー」の愛称で呼ばれる。東日本大震災直後から精力的に被災地を訪問し、地元の人々の声を聞き続けている。著書に『安倍昭恵の日本のおいしいものを届けたい!私がUZUを始めた理由』(世界文化社)など
<聞き手/高坂勝 まとめ/北村土龍 撮影/安田菜津紀>
|
『安倍昭恵の日本のおいしいものを届けたい!私がUZUを始めた理由』 昭恵米、露地野菜、国産100%の居酒屋・UZU(ウズ)の台所から。ひと手間でおいしいレシピをお届けします ![]() |
![]() |
『週刊SPA!3/18・25合併号(3/11発売)』 表紙の人/筧美和子 電子雑誌版も発売中! 詳細・購入はこちらから ※バックナンバーもいつでも買って、すぐ読める! |
【関連キーワードから記事を探す】
完成確率は20%? 陥没事故発生で遠のく外環道完成
関電幹部が「原発マネー」3億円をもらって、“被害者ヅラ”する裏側
「名護市長選の自民候補勝利の裏に公共事業バラマキが…」古賀茂明氏
前川喜平・前文科事務次官が証言「加計学園獣医学部新設は、素人が説明・評価して進められた」
石破茂氏の発言で懸念広がる加計学園の「バイオハザード問題」
許すな、「認諾」による「森友問題」赤木さん自殺の真相隠蔽<弁護士 弘中惇一郎氏>
「赤木ファイル」をめぐる三つの失敗<著述家・菅野完氏>
安倍首相も小池都知事も「票を持ってこない者は死ね」と言っているのだ/倉山満
森友問題で、安倍昭恵夫人がダンマリを続ける裏事情
渦中の「森友学園」運営の「塚本幼稚園」。保護者が語る衝撃の実態――『日本会議の研究』著者・菅野完氏緊急リポート
人のいなくなった家に野生動物が…原発事故から11年でも故郷に帰れない「風下の村の人びと」
3.11から11年。「息をするのもつらかった」“名物女将”の喪失と再生
宮城県発YouTuber「ほーみーず」。被災当時、小学生だった彼らの支援策
災害発生時も頼りになる「Google Map」。オフラインでも使える
10年前にそろえた防災用品は大丈夫? 使用推奨期限や最新防災情報の確認を
いまだに全壊した家があちこちに放置され…能登半島地震から1年、被災地でみた過酷すぎる冬
貧困とDVに苦しんだ「中卒社長」が、カンボジアに小学校を寄付するまで
「原発20km圏内」に残されたペット&家畜たちの今
「いつどこで大地震が起きてもおかしくない」JESEA地震科学探査機構・村井氏が警鐘
原発事故から6年、いまも20km圏内に取り残された動物たちを世話する人々