猪瀬直樹、作家[完全復活]宣言! ノンフィクション『民警』を連載スタート

猪瀬直樹「政治家として“アマチュア”だった」――。

 ’13年12月、医療法人・徳洲会からの資金提供問題で、東京都知事を辞任した猪瀬直樹氏の、政界への決別の言葉だ。

 その後、沈黙を守っていた猪瀬氏は昨年、“プロ”の作家として活動を再開させた。アイドリングを終えた猪瀬氏が、テーマを新たに掘り起こし、緻密な取材を重ねた実質的な作家「完全復帰」の第1弾となるのが、『週刊SPA!』で連載をスタートした『民警』(みんけい)だ。

 民間警備会社を意味する“民警”は奇妙なことに、昭和の重大事件にたびたび顔を出す。そして、東京五輪のテロが懸念される今後もそんな役回りを演じるのか。作家・猪瀬が炙り出す民警の歴史はこの国のどんな未来を照射するのか。

「日本の警備会社について調べていくと、’64年の東京五輪がターニングポイントになっていることがわかった」と猪瀬氏は語る。

 ’62年に創業したセコムは、’64年の東京五輪で選手村の警備を一括受注し、脚光を浴びるようになる。そして、興味深いことにその発注をしたのが、後に綜合警備保障を創立する村井順だった。セコムと綜合警備保障は際立ったコントラストを見せているというが、それは創業者によるところが大きいのだろう。2人の出自はあまりにもかけ離れている。

「セコムを創業した飯田亮現最高顧問は、戦時中は軍国少年で、敗戦で米軍に日本が占領されると、米兵が投げたチョコレートを食べたいのに蹴飛ばしたりする一方、新しもの好きの父親の影響で、目新しいことに対する拒絶感を持たずに育った。次第にアメリカに魅かれ、大学では当時ほとんどの人が知らないアメフトに熱中した。スポンジのようにアメリカを吸収していったわけです。

 一方、綜合警備保障の創業者・村井順は元内務官僚で、内閣調査室の初代室長。占領下ではGHQと渡り合い、首相の吉田茂に寝技を仕掛けるなど権謀術数に長けるが、当時の日本の保守系なら持ったであろう闇を抱えていた。

 アメリカのモダライゼーション(近代化)によって照らし出された光と影がこの2人。アメリカのニュービジネスを貪欲に吸収したのが飯田なら、敗戦国の屈辱や終戦後の日本の深い闇から立ち上がっていったのが村井。実は、この2人とも敗戦の悔しさを隠そうとしない。ただ、敗戦時、飯田は思春期の入り口に立つ12歳。一方、村井は官僚として脂が乗り始める36歳。この世代差が、2人に異なる針路を歩ませたのだろう。村井は“第2の警察”の使命感を隠さない。冷戦下の当時、国際共産主義が吹き荒れるなか、国内の防共に心血を注いだ官僚時代だったから」

 現在は、両者ともセキュリティ部門だけでなく、防災、メディカル、情報通信など多角化を推し進め、平和産業の側面の強い社会システム企業として、日本人の生活シーンのそこここに顔を出すようになった。だが、歴史は地続きだ。

「セコムが“外資”的なら、“官”の綜合警備保障がキャンプ・シュワブで基地移設に反対するデモ隊と対峙しているのが象徴的です。対照的な2社が東京五輪、永山事件といった昭和史の大事件で交差し、今度は来たる東京五輪で再び交錯しようとしている……」

 猪瀬氏は代表作『ミカドの肖像』で、なぜ旧皇族の土地にプリンスホテルが建つのか、という問いから始まり、従来とはまったく異なる天皇論を描ききる離れ業をやってのけた。『民警』のラストでも、読者を驚かせてくれるだろう。

取材・文/斎藤武宏 撮影/福本邦洋

※4/28発売の週刊SPA!から、猪瀬直樹の新連載『民警』は掲載開始!

民警

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