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シリアで拘束された安田純平氏、今もパスポートが取れない日本の異常

安田純平氏

安田純平氏

トルコ入国拒否を理由に、パスポート発給されず

 シリアで武装組織に拘束され、昨年10月末に3年半ぶりに帰国したジャーナリストの安田純平氏は、パスポートを申請したものの発給されないままになっているという。 「シリアで没収されたので今年1月に発給申請したのですが、審査中と言われたまま発給されていません。外務省によると、昨年帰国する際にトルコから強制退去・入国拒否にされていたので、渡航先が入国拒否している場合は旅券を発給しないか制限できる、という旅券法13条1項1号に該当の可能性があると。申告した渡航先にトルコは入れていないのですが、世界中どこにも行けない状態です」  安田さんによると今年1月の申請の時点で、通常は必要がない渡航先や日程・目的の記載を求められ、3月までに『インド、欧州、カナダに家族旅行に行く』と書いて提出した。その後、日程が過ぎた4月に外務省から呼び出され、新たな申請を求められたという。 「3月が過ぎても旅券が出ないので、何も予定はありませんでした。しかし、外務省に呼び出されて『渡航計画をいま出してほしい』というので、その場でインドや欧州への家族旅行の計画を立てて申請しました。  しかし、インド渡航の日程が過ぎても連絡なく、問い合わせても『審査中』というだけでした。航空便の便名や離発着の時間、空港名までその場で調べて書かせておきながら、インドや欧州でも審査が続いているというのは、『日本政府は私を外国に行かせたくないのだ』と思わざるを得ません」

紛争地取材自体を「犯罪行為」とみなすに等しい

渡航事情説明書の写し

今年1月の旅券発給申請の際、記入を求められた渡航事情説明書の写し。安田氏は結婚して姓を変えていて、家族を守るために非公表にしているが、これが「在日認定」のデマのもとにもなった

 安田氏はトルコからシリアに密入国した後に拘束されたので「渡航先にトルコが入っていなくても、どこかの国を経由してトルコに密入国するかもしれない」と指摘する人もいる。 「特に内戦が起きているような場所では、取材のため密入国して現場に入るのは珍しくありません。私は2012年にシリア内戦を取材しましたが、反政府側地域にいた外国人記者は全員、密入国でした。空爆被害者は病院に行くと拘束されてしまうので、レバノンやトルコ、ヨルダンに密出国して入院していました。当時、正規の出入国管理所はすべてシリア政府が掌握していたので、現地人も外国の記者もそれ以外に方法がありませんでした。  現場では、ヘリと戦車が市街地を攻撃し、民間人が多数殺されていた。明らかに政府軍によるものです。陰謀論やデマが無数にSNSに流れる現代こそ、第三者による現場の取材が必要なのです」  シリアのような内戦状態なら、反政府側の地域に密入国して滞在していても、そのことによる問題は現地では起きない。一方、トルコはそうした内戦状況にはない。密入国したらホテルにも泊まれないし、携帯のSIMカードも入手できない。警察に職務質問されたらすぐに逮捕されてしまう。 「そのようなリスクを負ってまで、トルコに行きたいとは思いません。『第三国からトルコに向かうかもしれない』と言ってしまえば、どこの国にも行けないことになってしまいます。紛争地取材をするためには、多くのジャーナリストが密入国せざるをえませんでした。それを理由にパスポートを発給しないというのは、紛争地取材自体を『犯罪行為』とみなすに等しいことになるのではないでしょうか」
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「身代金が支払われた」という、具体的な根拠もない
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シリア拘束 安田純平の40か月

2015年6月に取材のためシリアに入国し、武装勢力に40か月間拘束され2018年10月に解放されたフリージャーナリスト・安田純平。帰国後の11月2日、日本記者クラブ2時間40分にわたる会見を行い、拘束から解放までの体験を事細かに語った。その会見と質疑応答を全文収録。また、本人によるキーワード解説を加え、年表や地図、写真なども加え、さらにわかりやすく説明。巻末の独占インタビューでは、会見後に沸き起こった疑問点にも答える


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