いまだにある「シリアで解放された安田純平さんへの批判」に佐藤優が答える
― 連載「佐藤優のインテリジェンス人生相談」―
“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!
★相談者★箱男(ペンネーム) 会社役員 男性 63歳
シリアで3年以上も拘束されていたジャーナリストの安田純平さんが解放されたというニュースを目にして、なぜメディアは好意的な内容しか報じないのだろうと疑問に思っています。安田さんの発言を見ても、反省しているように見えません。
何度も拉致され、解放されて、同じことを繰り返すのはマヌケで、会社員なら懲戒免職ものでしょう。ジャーナリストなら問題ないのですか? 政府には日本国民を守る義務があると思いますが、身代金を取られてテロリストの資金源になってしまうような人間は日本国民であっても反社会的な人間と考えるべきです。
このような人を「よく頑張った」と労っていては、日本の常識が疑われると感じております。
◆佐藤優の回答
日本の常識は疑われていません。率直に言いますが、あなたのほうが国際基準では圧倒的少数派に属します。
内戦下のシリアで武装勢力に3年4か月拘束されていたフリージャーナリストの安田純平さんが10月23日に解放され、10月25日に帰国しました。安田さんの行動に関して、あなたのように、外務省の退避勧告が出ているにもかかわずシリアに入国したことを批判する人もいます。外務省が行ってはいけないという場所に冒険旅行のようなことをしたのだから、結果はすべて自己責任だという批判です。しかし、その批判は間違っています。
安田さんはジャーナリストです。政府が渡航を自粛してほしいと要請している危険な地域であっても、そこで起きている出来事について報道する必要があると職業的良心に基づいて決断する場合があります。それを非難するのは筋違いです。安田さんは11月2日に記者会見を行い、こう述べました。
「私の解放に向けてご尽力いただいた皆さん、ご心配された皆さんに、おわびしますとともに、深く感謝申し上げたいと思います。(中略)私自身の行動によって日本政府が当事者にされてしまったという点について、大変申し訳ないと思っております。何が起こったか、可能な限り説明することが私の責任だと思っております。この場をお借りしまして、拘束から解放までの経緯について説明させていただきます」
安田さんは何があったかについて説明することが自分の責任と考えています。この態度は正しく、国際的にもそう受け止められています。
解放された安田純平さんを労うのはおかしくないか
あなたの批判はまちがっている
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’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
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