低所得よりも怖いのは“精神的な貧困”
「未婚化が進む日本では、高齢男性の“おひとりさま”世帯はより増えていきます。経済的な貧困の解決は政治の問題ですが、“精神的な貧困”に陥らない方策を提示することが社会学的な課題です」
『「破格」の人―半歩出る働き方』(KADOKAWA)
そう語るのは社会学者の阿部真大氏。精神的な貧困の代表である孤立化は未婚化が進む現代人にも悩みの種だ。
「老人ホームの調査をする際、たむろしておしゃべりしている女性に対して、男性は独りぽつねんとしている姿を目にします。別に『男もおしゃべりのスキルを』と言っているわけではなく、“独りでいても孤独を感じない”ということが重要です。これは“他人志向型”――つまり他者からの評価を価値基準とする出世競争に邁進してきた人ほど陥りやすい。精神的貧困を避けるためには、自分だけが楽しめる価値観を持った、“内部志向型”の人間を目指すべきです」
定年後、おもむろに趣味を持ち始めようとして挫折する高齢者は多い。現役世代のうちに、仕事とは別の趣味や生きがい、人的ネットワークを持つことが大切なのだ。
「高齢化社会というとマイナス面ばかりが取りざたされますが、見方を変えれば、“知恵を持ち、落ち着いて物事を見れる”人が多い社会ともいえます。成熟した高齢者の知恵とは生きるための工夫や、人付き合いのスキルである“生活知”のこと。コンテンツばかりが高齢化している今の消費社会では見えづらいですが、老後は消費することが豊かさには直結しません。そのために必要なインテリジェンスは、今からでもカネをかけずに身につけることができます」
カネがすべての価値観が閉塞感を生み格差を感じる。ボロを着てても心は錦の精神が重要だ。 <取材・文/スギナミ>
<3か条>
1 孤立しても孤独を感じない内部志向型の人間を目指す
2 現役世代のうちに仕事とは別の趣味、仲間を見つける
3 生活知を磨くことが尊敬される老人への第一歩
【阿部真大氏】
社会学者。甲南大学准教授。労働社会学を専門とし、現代日本の労働現場を分析する。近著に
『「破格」の人―半歩出る働き方』 「本物の勝ち組」に共通するのは、優秀な組織人であることと、優秀な変人であること |
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