サービス満点の女子7人制ラグビーが一粒で2度おいしい理由
~フモフモ編集長の今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第19回~
※前回の話…スポーツ好きブロガーのフモフモ編集長が、東京五輪でチケットが買えそうな穴場競技探訪へと出かけました。今回の穴場候補は7人制ラグビー。今来ているのはラグビーブームではなく、ラグビー日本代表ブームもしくは五郎丸ブームだから、「7人制ラグビー」は逆に穴かもしれない。そんなラグビーが盛り上がっていそうな雰囲気と、実態が乖離しているならば、隙が生まれるのではないかと考えたフモフモ編集長。イメージと現実のギャップによって、7人制ラグビーは予想通りの穴場になっていた。
さて、穴があるのはいいとして、競技性はどうなのか。7人制は15人制と同じサイズのフィールドを7人だけでカバーするという仕組み。当然、隙は多く、ちょっとラインを突破されると一気にトライまで持っていかれるような激しい展開が見られます。この大会でも、キックオフのボールを処理し損ねる⇒相手に奪われる⇒一気にトライまで持っていかれる、という場面がたびたび見られました。よく言えば点の取り合い、悪く言えば守備が緩い。
日本とスリランカの試合などは、かなり実力差があることもあって日本が49-0と圧勝しました。しかもコレ、試合時間が前後半7分ずつのトータル14分しかないなかでです。15人制が前後半40分のトータル80分ですから、単純計算で言えば5.5倍ほどになりますので、同じ時間戦えば280点取るというくらいの大差になります。
ちなみに、7人制はトライ後のコンバージョンなど、いわゆる五郎丸がキックする場面を「ドロップゴール」で行なう決まり。五郎丸みたいにボールを地面にセットしてじっくり構えて蹴るのではなく、地面にワンバウンドさせたボールを蹴るという方式です。地面に置いたものを蹴るよりワンバウンドのほうが難しいのは当たり前ですので、よくミスします。
女子の試合では「蹴ったボールがゴールまで届かない」「まったくヘンなほうに蹴っちゃう」などの失敗キックが多く見られ、トライ後のゴールは基本的に入らないようでした。よっぽど真ん中にトライしない限りは、ナイものと思ったほうがよさそうです。それでも49点入るんですから、どれだけ点が入るんだという感じ。15人制以上に実力差が露骨に点差になる種目のようです。
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本家15人制がパワーを問う種目だとすれば、こちら7人制は圧倒的にスピードの種目です。なにせ、7人しかいませんので。端っこでスクラムでも組めば、そこに双方4人ずつが取られ、残りは3人ずつしかいなくなります。広大なスペースがありますので、バカっ速い選手がひとりいればあっという間にゴールに到達です。そういう意味では、「デカイっすね…」ではなく「ムッチリしてますね」というくらいの体格がハマりそう。ムッチリ美人の登場には大いに期待が持てそうです。
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この日も順調に勝ち星を重ねた日本。最終的には「1位・2位決定戦で23点差以上で負けない限りはリオ行き」という大きな優位を築いての戦いとなりました。その試合の模様はBS-TBSなどでも中継がありましたので、ご覧になった方も多いかと思いますが、日本はカザフスタンを見事に破ってリオ行きを決めました。
さすがアジア予選の頂上決戦までくると、一発で簡単に決まるようなプレーは少なくなり、ラグビーらしい接点での攻防も激しくなります。応援にも熱がこもり、15人制のラグビーワールドカップの興奮も甦ってきます。午前中の49-0を見せられたときは「つまら……」まで声が出掛かりましたが、ある程度以上のレベルの互角の戦いなら見ごたえも十分にありました。穴場ではあるけれど、観戦は面白い。このあたりはさすがラグビーという安心感ですね。
~サクラセブンズ、リオ行き決定!~
試合自体もよかったのですが、それ以上に印象深かったのはアップの風景。この1位・2位決定戦の前、サクラセブンズの面々は観客席のすぐ目の前でアップをしていました。場所もないのでしょうが、それにしてもわざわざ目の前でやるとは。選手たちはちょこちょこと位置を変えて、フェンスの前を端から端まで移動しながらアップをします。なるほど、いろいろな人に間近で見てもらおうという配慮なんですね。練習の様子をたっぷりと見せたあとは「幸せなら笑いましょう♪」と『幸せなら手を叩こう』の5番を唄って踊るという景気づけも。なかなか楽しい出し物で、ぜひ今後の試合ではウォークライのように試合開始直前にやってもらいたいなぁと思ったほど。
試合後には律儀に観衆と握手をしながら場内を一周し、ウィニングランの途中なのにサインの求めにもひとつひとつ丁寧に応じるサクラセブンズ。まだ認知もされていない7人制という競技をどんどん広めて行こうという気持ちが感じられる、素晴らしいサービスぶりでした。やがて「穴」でなくなれば、こうしたサービスというのは物量的に不可能になっていきますが、穴だからこそ微笑ましい光景にも出会える。試合も勝ったし、サービスもいいし、穴場の素晴らしさを再確認できるし、とても楽しい試合となりました。サクラセブンズ、好印象です。
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観て楽しく、席にゆとりがあるだけでも素晴らしい「穴」ですが、さらにもうひとつ、この競技には注目すべき穴があります。それは「頑張れば出られるんじゃないか?」という穴。もし選手になれば、チケット買うとか買わないとかすら関係なく、開会式にだって出られます。ぴあで絶対に売ってないVIP席じゃないですか。出られれば。
まだまだ強化の途上という段階のため、今大会の代表メンバーたちも経験者・エリートばかりではありません。キャプテンの中村知春さんはバスケットボール経験者の広告代理店社員ですし、竹内亜弥さんはバレーボール経験者で出版社を休職しての挑戦、冨田真紀子さんはテレビ局社員という変わりダネの経歴揃い。各メディアが「リオのネタが足りないぞー!誰か社内でラグビーできるやつおらんかー?」と募集でもかけたんじゃないかと思うような顔ぶれです。
そのほかにも陸上からの転向や、8歳の子どもを育てる専業ママ選手などエリート街道とは異なる歩みでココにたどりついた選手たちがゾロゾロ。たまたま僕の隣で観戦していた女性の集団は選手の知り合いらしく、「酒ばっかり飲んでた先輩が五輪に行っちゃうよ」「酒飲んでるだけの人だったのに」などと、めっちゃハードル低そうな情報も提供してくれました。ハナから勝負にならないと諦めるほど、代表選手たちと町のスポーツウーマンの距離は遠くないのではないか。少なくともほかの競技よりは。そんなことさえ考えてしまいます。
どうでしょう、いっそ「出る」方向で目指してみるのは。「観る」方向は、まず大丈夫なんじゃないかなということで滑り止めとしつつ、2020年東京で「出る」。50メートル走に自信アリとか、バスケ・ソフトボールなどの経験でボールキャッチに自信アリ、サッカーをやっていて球蹴りなら任せとけ……などという女子がいたら、この「穴」狙ってみては。
ほかの競技だと、子どもの頃からやっている選手たちの厳しい競争の中を勝ち抜いてようやくという話ですが、それよりは絶対に広い「穴」が開いているはずです。ほかよりは絶対に門戸は広い。よしんばやってみてダメだったとしても、ほかの穴競技のように鉄砲買ったり、馬飼ったり、ボート買ったりするほどの実費負担はありません。せいぜいボールと靴くらいです。
「アタシも東京五輪目指してたんだよね……トライアウトでは残れなかったけどさ……」
なんて、遠い目で2020年のスタンドに座ることができたなら。ものすごい自分に酔える最高の瞬間になるのではないでしょうか。今なら目指せる、目指していたと言い張れる。「出る」用の穴としての7人制女子ラグビー、要注目です。
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『自由すぎるオリンピック観戦術』 スポーツイベントがあるごとに、世間をアッと言わせるコラムを書き続ける、スポーツ観戦ブログ『フモフモコラム』の中のひとによるオリンピック観戦本 ![]() |
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