「坂田亘アニキに届いてほしい…」ハッスルを看取った男・若鷹ジェット信介の胸中【最強レスラー数珠つなぎvol.5】
――ハッスルMAN’Sワールドと、ハッスルはまた違うものですか。
ジェット:全然違うというわけでもないんです。ハッスルというと、ふざけているとか、芸能人を使ってどうとか、そういうことでフィーチャーされたものなので、プロレスの中でも極めて「ふざけた人たち」というカテゴリーにされがちなんですけど。でも決してそんなことはなくて、ふざけるならしっかりふざけようよ、ということなんです。逆に、「一生懸命やっている風」な人たちって、よっぽどふざけていると思うんですよ。なにを持って「強い」と言っているんだろうかと。だって、体を作り上げている人なんて世の中にいっぱいいるんですよ。なのに、プロレスとはこうだ、という定義自体がナンセンスなものだと僕は思っています。
ジェット:格好つけると、そこへのアンチテーゼというんですかね。僕らは着ぐるみをリングに上げているけど、着ぐるみの中にはちゃんとプロレス界で活躍している人が入っている。例えば、「えび天」というキャラクターに入っているのは、KAIENTAI DOJOの旭志織選手です。旭選手は対戦カードには載っていないんですよ。なぜかと言うと、えび天の中に入っているから(笑)。それがふざけていると捉えられるんだったら、そりゃあ、ふざけてますけど、「真剣にふざけてます」というのが僕らの大前提です。
――ランズエンドでの試合を観て、格闘技的な強さと、笑いの融合だと感じました。
ジェット:もともとハッスルがやろうとしていたのは、そこなんです。PRIDEと同じ会社がやっていたんですけど、対極のものをやろうというのがハッスルだったんですよね。マスクマンの中身がPRIDEのトップ選手だったり。ハッスルMAN’Sワールドでも、プロレス界の一角の選手を着ぐるみの中に入れたりしているのは、そういうところで残り香を感じてほしいからなんです。「プロレスってこういう角度もあるんじゃないの」というのを見せられたらいいなと。
――ハッスルMAN’Sワールドの解散を決めた理由は?
ジェット:ハッスルの後期、僕とUEXILE、坂田亘、そして当時ハッスルの社長だった山口日昇の4人が残ったんですけど。その4人とも、いま別のステージでやっている中で、僕とUEXILEしかハッスルというものにこだわっていない。お客さんすらこだわっていない。であれば、精算していいんじゃないかなと。坂田さんも今年のRIZIN出場を最後に、レスラーを引退します。もう僕らだけこだわっていても仕方ないんじゃないかと思ったのが、解散の理由です。
――今日の試合後、「僕らの一番上のアニキである坂田亘に届くように」とおっしゃいましたが、坂田さんと山口さんは、今日でハッスルが終わったことをご存じなんですか。
ジェット:山口社長は、昨日ちょうど僕が経営している店に来ていて、「明日ハッスル最終回です」という話をしました。「行かないよ」と言われましたけど(笑)。もはや、だれもこだわっていないんです。坂田さんも、「お前らまだやってんだ」くらいに思っていると思います。僕らの思いがどうだというのは伝えても伝わらないので、せめてみんなで「坂田のために」というのが届けばいいなと、お客さんと全員で「ハッスル、ハッスル!」をやりました。
――ハッスルにこだわってきた理由とは?
ジェット:「応援してください」と言い続けてきたことを、上辺だけで言っていたんじゃないと証明したかったんです。「このイベントに賭けている」とか、「ここから頑張ってみせる」とか、みんな言うじゃないですか。でも僕はこれ以上、お客さんにウソをつきたくないんですよね。そこの意地だけです。僕の中ではやり続けることが証明だったんですけど、いま思えばそういうことでもないんじゃないのかと肩の力が抜けたというか。終わるタイミングを探していたんでしょうね。

尾崎ムギ子/ライター、編集者。リクルート、編集プロダクションを経て、フリー。2015年1月、“飯伏幸太vsヨシヒコ戦”の動画をきっかけにプロレスにのめり込む。初代タイガーマスクこと佐山サトルを応援する「佐山女子会(@sayama_joshi)」発起人。Twitter:@ozaki_mugiko
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【大会情報】
■ランズエンド6新木場大会
2017年3月1日(水)
■ランズエンド7新木場大会
2017年6月14日(水)
問い合わせ(株)エクスカリバー 03-6421-5921
■撮影協力:うまかもん若鷹
住所:東京都品川区中延2-8-13 佐藤ビルD号
TEL:03-5498-7347
HP:http://umakamonwakataka.com/
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