「坂田亘アニキに届いてほしい…」ハッスルを看取った男・若鷹ジェット信介の胸中【最強レスラー数珠つなぎvol.5】
――いま振り返って、ハッスルとはなんだったのでしょうか。
ジェット:いろんな人の夢だったんじゃないかなと。本当にすごいお金が動いていたし、一番夢を見せてくれていた時代です。橋本(真也)さんが亡くなってからは、見たこともなかったような景色を見せてくれました。派手な会場、派手なイベント、派手なお金の使い方。派手なギャラを貰う選手がいて、派手な暮らしぶりをしていて。もちろん浮き沈みを全部見ましたけど(笑)。夢の形だったんじゃないかと思います。
――いまはビジネスに力を入れてらっしゃいます。
ジェット:居酒屋(「うまかもん若鷹」)経営と、フランチャイズで天ぷらの店(「天ぷら食堂若鷹」)を展開しています。
――崔選手は、ジェット選手のことを「プロレスの仕組みや組織をまずは作って、ベースからしっかり固めている技巧派」だと。
ジェット:プロレスって、結局、お金を掴めない業種なんですよ。1試合していくら、というのをいつまで続けられるのかという話なんですよね。野球選手やサッカー選手のように、莫大な富を得ている人なんてプロレス界にはいないですよ。なので、みんなが食っていける基盤作りと、あとはそういう背中を見せてやるということですよね。プロレスラーが、1万円、2万円のお金を稼ぐのに四苦八苦して、月収30万円になるために何試合して、というのを間近で見てきた中で、そんなことはいいから、ひと月で100万円借りてこようよ。その100万円で居酒屋でも経営しようよ、というほうがよっぽど賢いと思うんです。
僕が表に出たいという気概もないし、そんなにトレーニングをしているわけでもないし、面白いことをしているわけでもない。そんな中で、僕じゃないだれかが僕の飲食店を使って、生活の基準をある程度まで上げて、そこから巣立ってくれればいいなと思っています。プロレスラーだけじゃなく、地下アイドルでもいいし、舞台俳優でもいい。売れないけど好きなことをやっている人たちを支援することを心掛けています。要はプロレスラーであることを、なにに変えられるかです。
――プロレスラーになりたいと思ったきっかけは?
ジェット:学生プロレスをやっていたんですが、とてもじゃないけどプロレスラーになれるとは思っていませんでした。学生プロレスって、4年間のうちに下積みからスター選手になって、引退するまでを疑似体験できるんですよ。そこで勘違いしちゃったんですよね。俺らみたいな、本当にこの競技を好きな人間がやるべきだと。けど、いざ入ってみたら違っていて、いろんな不自由が多かった。ZERO-ONEの1期生で入って、デビューするまでは必死だったんですけど、そこで気持ちがゴールしちゃったのかも知れないです。どこか退屈な部分がずっとあって、ビジネスのほうが面白くなりました。
尾崎ムギ子/ライター、編集者。リクルート、編集プロダクションを経て、フリー。2015年1月、“飯伏幸太vsヨシヒコ戦”の動画をきっかけにプロレスにのめり込む。初代タイガーマスクこと佐山サトルを応援する「佐山女子会(@sayama_joshi)」発起人。Twitter:@ozaki_mugiko
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【大会情報】
■ランズエンド6新木場大会
2017年3月1日(水)
■ランズエンド7新木場大会
2017年6月14日(水)
問い合わせ(株)エクスカリバー 03-6421-5921
■撮影協力:うまかもん若鷹
住所:東京都品川区中延2-8-13 佐藤ビルD号
TEL:03-5498-7347
HP:http://umakamonwakataka.com/
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