男に求められるのは“子育て”じゃなく“子育ち”の環境整備【安藤哲也×田中俊之 パパの未来を語る】
安倍政権下「女性活躍」が叫ばれる昨今、「男の家事・育児参加すべき」とする風潮になっている。イクメンなる言葉が定着したなか、いまどきの父親は新たな悩みを抱えている。果たして、父親となった男性諸氏に救いはあるのか。そこで、近著『「パパは大変」が「面白い!」に変わる本』(扶桑社刊)を執筆し、父親の育児支援を行う安藤哲也氏(NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事)と、「男性学」第一人者の田中俊之氏(武蔵大学社会学部助教)が特別対談。父親が抱える病巣とその解決策を話し合った。
安藤:まず、日本の父親たちの置かれている課題について教えてもらえますか。
田中:たぶんここから10年くらいでフルタイムの共働き家庭が本当に増えると思うので、男性が真剣に家事・育児をやらないと、家庭は回らないだろうなとは思いますね。
安藤:でも、急に男が家にいるようになると、かえって困ってしまう女性もいると言いますよね。
田中:そうなんです。これだけ「イクメン」が奨励されているのに、いざ男が育休を取ったり定時で家に帰ったとして、奥さんや周囲の目がそれを受け入れてくれるのか。どうしても「ウチのお父さん、会社で干されたりしていないかしら」「あの家のお父さんはちゃんと仕事しているのか」と思われてしまう。
安藤:そこは男性だけの問題ではなくて、日本の意識の面での環境が整っていないところがある。先生も去年お子さんがお生まれになりましたね。
田中:はい。先月でちょうど1歳になりました。
安藤:おめでとうございます。実際に自分で育児なさって、どうですか?
田中:やっぱり、今年一年間はほんとに仕事ができなかったという思いがありますね。大学の授業はやりますけれど、それ以外の時間にやっていた研究や執筆は本当にできなくなりました。
安藤:育児にがっつり向き合えば、当然……
田中:仕事のペースを落とさざるをえない。
安藤:かつて男性たちは育児しなくてよくて、仕事をバリバリやってきたじゃない。
田中:はい。
安藤:その時間を取れないことへの忸怩たる思いっていうのはあるんですか。
田中:それはやっぱりありましたね。よくないなと思うのは、「育児してるんだから」みたいに自分に言い訳をしちゃう。
「イクメン」は実社会に受け入れられているのか
『「パパは大変」が「面白い! 」に変わる本』 本書の第五章にも、安藤氏×田中氏の対談を収録。男性も「当たり前に」育児をすることを求められてしんどい現代、育児も仕事も、人生を楽しくするために必要な社会なあり方について提言を行っている。 |
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