更新日:2022年08月28日 09:27
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今さら聞けないクラフトビールって何? ビジネスマンのための一目おかれる酒知識

ビールの種類は酵母によって異なる

 ビール酵母の種類は大きく2つに分けられます。それが上面発酵酵母(エール)下面発酵酵母(ラガー)です。上面発酵酵母は比較的高温で発酵し、短期間で発酵を終えます。一方、下面発酵酵母は比較的低温で発酵し、長期間発酵するという特徴があります。  歴史的には上面発酵の方が古く、下面発酵は15世紀にできた新しい醸造法です。味わいは、上面発酵が華やかな香りで奥深い味、下面発酵は爽やかでスッキリ系のビールになります。そして、ピルスナーは下面発酵を代表するビールのスタイルなのです。  下面発酵のビールには、ほかにどんなものがあるでしょうか。ドイツに淡色のヘレス、濃色のデュンケル、黒色のシュヴァルツというビールがあります。また、アルコール度数の高いボックというビールもあります。  上面発酵のビールとして日本で有名なのは、小麦を使ったドイツビールのヴァイツェンでしょう。バナナのような香りと甘酸っぱい味わいが、女性に人気ですね。  また、上面発酵のことをエールというので、○○エールという名前のビールはみんな上面発酵です。イギリス発祥のインディアペールエール(IPA)は、世界中で流行中のビールで、ホップの苦みと高めのアルコール度数が特徴です。これは、昔イギリスから植民地のインドへビールを運ぶとき、劣化を防ぐため、ホップをたくさん入れてアルコールも高くしたのが始まりだといわれています。  ベルギービールも上面発酵です。代表的なのはベルジャンホワイトエール。小麦を使っているので白濁していて、ホップの他にハーブやスパイスが入っているのでスパイシーな香味が特徴です。  ドイツやイギリスやベルギーがビール発祥の伝統国だとしたら、新興国にアメリカがあります。1960年代に西海岸でマイクロブルワリーのムーブメントが起きてから、独創的なビールをつくり続けているクラフトビールの先進国です。最近日本でもよく見かけるようになった、カスケードホップを使った柑橘系の香りがするビールも、アメリカ発祥です。  先日、ブルックリン・ブルワリーのブルワー、ギャレット・オリバー氏が来日し、彼を囲む会に行ったのですが、乳酸菌を使ったものすごく酸味の強いビールや、テキーラの樽やシャンパンの樽で熟成したビールなど、もうアートとしかいいようのないビールに驚きの連続でした。  また、スコットランドにブリュー・ドッグというブルワリーがあり、「パンクIPA」というビールをつくっているのですが、パワフルなホップとクドさのない苦みのバランスが最高で、私の中で今のところ世界一美味いビールです。ここのブルワーのジェームズ・ワット氏にも会いましたが、彼もヒラメキとアイデアに満ちたアーティストでした。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1330353

これからの季節、屋外でのクラフトビールイベントも多数あるので、種類ごとに飲み比べて好みを見つけるのもいいかもしれない

 世界のクラフトビールは奥深く、まだまだ進化する可能性があります。日本のクラフトビールの歴史は浅く、たった20年ですが、世界的なコンクールで優勝するようなビールも出てきています。これからもっと面白くなりそうなクラフトビール、今夜あたり、ちょっと飲んでみませんか? 【江口まゆみ】 神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学卒業。酒紀行家。1995年より「酔っぱライター」として世界中の知られざる地酒を飲み歩き、日本国内でも日本酒・焼酎・ビール・ワイン・ウイスキーの現場を100軒以上訪ねる。酒に関する著書多数。SSI認定利き酒師、JCBA認定ビアテイスター
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