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「25年で作られた条例は1本」の都議会で法律のプロができることは? 三鷹市・山田浩史候補に密着【都議選直前ルポ】

街頭活動で直面した介護問題

 大手町の高層オフィスビルディングに勤務していた弁護士時代とは打って変わり、現在の山田は泥臭い選挙活動に取り組む毎日を送っている。朝夕2回の駅前での街頭演説にくわえ、昼間は外回りに奔走している。  選挙ポスターを貼らせてもらう場所をみつけるために、自ら自転車で市内を回るときもあり、休む間のない忙しい毎日だ。ビラ配りをはじめ、山田を常に支える妻も、「(山田の)顔を見ると、疲れているのがわかる」と心配そうだ。 「やはり新人候補者にとって厳しいのは、組織がないことですね。選挙活動を手伝いたい、という声は友人からも多くいただくのですが、30歳過ぎという自分の世代だと、働き盛りで朝の7時とかにボランティアを頼むのは、なかなか難しいです。ポスター貼りにしても、現職候補に比べると、苦労していると思います。二人の息子は母親に預け、妻にすごく助けてもらっています。本当にありがたいことです」  妻と文字通り二人三脚で選挙活動を送っている山田だが、街頭演説では「頑張れ」などと声をかけられることも少なくない。様々な人々の話を聞くなかで、いままであまり触れる機会のなかった社会問題に直面することもあるという。 「一番は介護の問題です。街頭で声をかけてくださる方がいて、『介護の仕事をしているが、やりがいはあるのだけど、仕事自体は長時間でキツイし、給料も良くない』といった人生の問題を相談してくださる方がいて。別の方からも、介護施設の現場を見て欲しいといわれ、実際に施設の訪問もしました。現場を見て見ないとわからないことはあると思いました。個人の力では解決できない、政治の問題を解決していきたいです」

愚直なマジメさで有権者に向き合う

 三鷹市の定数は2議席だ。これを、自民党の新人・加藤浩司(50)、民進党の現職・中村洋(45)、共産党の新人・室喜代一(61)、そして、都民ファーストの新人である山田が争う構図になっている。山田有利という報道も出ているが、本人は「いろいろな数字があり、何を信じればいいかわからない。不安はもちろんありますよ(笑)」と語る。  確かに、強敵揃いではある。民進党の現職・中村は長期にわたり、ほとんど毎朝、三鷹駅南口で演説をしており、地元民にはよく知られた存在だ。自民党の新人・加藤は、地元の明星学園出身で三鷹市議を3期10年勤めており、体調不良を理由に退任する元都議会議長の吉野利明都議の地盤も受け継ぐ。どちらも地元に根ざした候補者だ。  どうしても地縁という面では見劣りするが、能力や将来性では、山田は有権者に対して充分なアピール材料を持っている。あとは、選挙活動を通じてどこまで知名度を上げれるか、という部分になってくるだろう。  しかし、山田は、幼少期より周囲から「マジメ」といわれ続けた男である。妻によると、大変な読書家だといい、家には山田がAmazonで購入した法律関係の専門書や政治経済関連の書籍がひっきり無しに届く。本を読み出すと、隣で子供が泣きはじめても、気づかないくらい集中しているという。派手な宣伝は苦手そうだ。  では、支持を広げるための試金石は何か。やはり、そのエリートらしからぬ腰の低さで有権者の相談に向き合う姿勢と、必要とあらば現場まで足を運ぶフットワークの軽さを生かし、地道な活動で可能な限り多くの人と交流し、その人柄をどこまで伝えられるかという点になるだろう。  また、演説の内容でより独自性を出していく必要もある。政府の情報公開や都議会の立法機能といった、多くの都民ファーストの候補者が語っているような内容だけでは充分ではない。有権者がきっかけで向き合うことになった介護という目の前の課題や「個人の力では解決できない、政治の問題を解決していきたい」という想いを演説で訴えるべきだろう。  そうした“山田自身の言葉”によってこそ、政治家には珍しいほどの、愚直なまでにマジメな人柄が有権者に響くのではないか。喧嘩をほとんどしたことがないという愛妻と、二人三脚で挑む山田の選挙戦に、注目したい。 〈取材・文/河野 嘉誠〉
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