小池新党は都政を変えるか? 100万ユーザーの政治サイトを主宰、“人を巻き込む力”は群を抜いている――武蔵野市・鈴木邦和候補
6月23日告示の東京都議会議員選挙(以下、東京都議選。7月2日投開票)。最大の焦点は、小池百合子知事率いる「都民ファーストの会」が、自民党に代わり第一党となるかどうか。が、今回のように政局の要素が強い選挙では、時として、候補者個々の資質や人となりを見ず、政党のみを見て投票する流れもできやすい。事前予想で優勢とされている「小池新党」の各候補者は、政治家としてどんなビジョンを持っているのか――その素顔に迫ってみる。
【短期集中ルポ「小池新党は都政を変えられるのか?」~第1回/武蔵野市・鈴木邦和候補】~
6月10日の午後12時30分過。JR武蔵境駅前に立ち並ぶ街路樹をバックに、ライトグリーンの薄手のジャケットを羽織った東京都知事・小池百合子が、ゆるやかな拍手に包まれながら、選挙カーの上に登った。
車上の看板には「都民ファーストの会」という文字とロゴが掲げられている。緑字に白抜きのデザインは、同党の代表を務める小池が政界デビュー時に所属していた日本新党の党旗と同じだ。
自民党を敵に回しての出馬だったにも関わらず、無党派層の支持を得て約291万票を獲得し、女性初の東京都知事が誕生した2016年7月の都知事選から1年余がたったが、小池人気は健在のようで、演説が始まると駅前の人口密度は急激に高まった。筆者の目視でも、少なくとも600名以上が詰め掛けるなか、小池の演説が始まった。
「あの都知事選が、東京大改革の第1ページであったならば、今回、6月23日から始まります都議選は、第2ページと、新しいページを開くことになります」
聴衆のあいだをボランティアスタッフたちが動き回り、「かなり混み合ってきまして、できましたら前へお進みきださいませ」と呼びかけていた。
人が密集するにつれて蒸し暑くなり、汗がにじみ出た。隣で演説に耳を傾けていた60代の男性に声をかけると、「今回の選挙は政局になってしまっているからね。候補者本人を見て、地域のために働いてくれる人を選ぶべきだから、本当はよくない」と話してくれた。
小池の演説の最中、一定のスピードで頷きながら首を左右に動かし、聴衆に目線を配っていた都民ファーストの会の新人候補者である鈴木邦和(28)に、その声が聞こえたはずはないのだが、マイクを握ると“地域目線”の公約をアピールした。
「武蔵野市の上水道の本管の耐震化率は、わずか2.9パーセントです。都政のバックアップを受けて、地震に強い上水路を作ります」
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午後13時過ぎに街頭演説が終わったあとで、JR吉祥寺駅近くの雑貨ビルに入居する、鈴木の選挙事務所を訪ねた。出迎えてくれた鈴木は、まだ昼食も食べていないという。事務所ビルに隣接するモスバーガーで話を聞いた。
一足先に注文を終え、2階のテーブルで待っていると、ほどなくして鈴木が颯爽と階段を登って来た。「自分、大食いなんで」と屈託なく笑う鈴木のトレーには、エビカツバーガー、とびきりチーズバーガー、そしてモスチキンが並んでいた。武蔵境駅前での街頭演説の盛況ぶりをよそに、鈴木は静かに口を開いた。
「今日の演説会は、三鷹や吉祥寺の駅前でやった時より多かったですね。選挙カーの上から数えると、1000人はいたと思います。とはいえ、あまり小池人気にぶら下がっているわけにはいきません。武蔵野市の皆さんは、『お前は何がしたいのか』と候補者本人を見ている。きちんと市と都庁を繋げる役割を果たさなければいけません」
鈴木の危機感はもっともだ。都議選における武蔵野市の定数は1つだけ。これを、自民党の現職の島崎義司(51)、民進党の元職の松下玲子(46)、そして鈴木が争う構図だ。公明党が都民ファーストと選挙協力をしており、自民の島崎は公明票が期待できない。
そのため、鈴木が一歩リードしているとの報道も出ている。しかし、「武蔵野は共産、生活、民進が一体で、引き剥がしは難しい」(市政関係者)といわれるなか、共産党は候補者擁立を見送り、民進の松下の支持を決定するなど、予断を許さない状況だ。武蔵野は菅直人元首相のお膝元ということもあり、民進としても“絶対に負けられない戦い”だ。
政局的な側面が強いからこそ、最終的な決め手になるのは、地域に役立つ政策や人物としての魅力といった、候補者本人に依拠する要素の可能性が高い。それをどう発信していくのか。「選挙で会えるのはせいぜい5000人程度。実際に会えない人にどうアプローチするかは常に考えています。選挙カーをガラス張りにしたのも、そのためです」(鈴木)
“地域目線”の公約をアピール
小池人気にぶら下がってられない
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