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ピュアオーディオファンとDJが歓喜した伝説の名機SL-1200復活の軌跡

日本のDJに向けたユースモデルが登場

 アメリカやヨーロッパで流行したディスコやクラブの文化は、日本にも影響を与えていた。70年代から90年代にかけて、若者を中心にたびたびブームが過熱するなかで、国内でもDJユースのターンテーブル需要が増加していく。そして1989年、国内向けモデルとしてSL-1200MK3」が登場した。基本的な構造は前モデルとほとんど変わらないが、内部にTechnics独自の素材を充填し、防振対策がますます強化された。さらに筐体のカラーリングが、シルバーからブラックへと変更されたのもポイントだろう。
SL-1200MK2

1989年に発売された「SL-1200MK3」。ロングセラーを続けていた「SL-1200MK2」の改良モデルで、さらなる防振対策が、高音質化に貢献した

「そしてSL-1200MK3の発売から6年、本シリーズは世界累計販売台数が200万台を突破しました。これを記念し、国内向けに5000台限定で売り出したのが『SL-1200LTD』です」  基本的には、SL-1200MK3の筐体を踏襲しつつも、ターンテーブルやトーンアーム、アームベース部分に24金メッキを施した贅沢な作りに。シリアルナンバープレートには、限定販売を示す通し番号が刻印された。 「ただ、この刻印にはちょっとしたトラブルがありまして。当時の営業マンたちが、いろんなところでシリアルナンバーの『1』を贈ると約束してきてしまったので、調整するのが大変でした(笑)」  ディスコ・クラブブームに後押しされ、90年代後半には、購入者の約8割がDJだったというSL-1200シリーズ。このまま栄華は続くかと思われたが、ブームが下火になり、オーディオ業界も縮小の一途をたどっていった。パナソニックは、2008年に発売したSL-1200MK6を最後に、2010年には全シリーズの販売を終了し、休止という決断を下した。
SL-1200MK6

2008年に発売され、2010年に販売終了した最終モデル「SL-1200MK6」。初代から各モデルを見比べると、デザインがいかに変化していないかがわかるはずだ

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最新技術が盛り込まれた新生SL-1200
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80's青春男大百科

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