新連載に見る漫画家・西原理恵子の生き残り術「パチンコ屋の新装開店みたいなもんですね」
足かけ16年にわたり毎日新聞で連載された『毎日かあさん』を6月に終了した西原理恵子氏。連載終了に当たって発表した「卒母」宣言と、巣立っていく子供たちの後ろ姿を静かに見送る感動的な最終回は話題を呼んだ。先頃発売された最終巻『毎日かあさん14 卒母編』もベストセラーとなっている。
16年も続いた人気連載を終了するのはもったいない気がするし、実際、惜しむ声もあっただろう。作者としても名残り惜しい部分はあったのではないかと思いきや、当の西原氏からはこんな答えが返ってきた。
「ていうか、単行本も十何巻になってくると、お客さんもどこまで買ったかわかんなくなっちゃうじゃん。それでダブって買っちゃって『しまった!』みたいな。私も『進撃の巨人』とかダブって買って『チッ!』て思うし。だから、このへんで一回リセットしちゃえと。あと、このかあさんの絵も飽きちゃったんで」
身もフタもないが、確かに巻数を重ねると売れ行きも下がっていくのが世の習い。人気にしがみつかず、スパッと切り替える潔さはさすがである。
というわけで、同じ毎日新聞紙上で10月2日から始まった新連載が『りえさん手帖』。事前のリリースでは、ド派手な大阪のおばちゃん的キャラのイメージビジュアルと〈卒母もしたことですし、これからは自由な翼を得たおばさんたちの傍若無人ぶりを好きに描いてみようと思うんです。もう世間に対する恥とか、こう思われたら困るとか、あの人に悪く思われたらどうしようとか、そういうのはもう全部なくなりましたので。だから「毎日かあさん」がより図々しくパワーアップしたバージョンになるでしょう〉とのコメントが発表されていたが……。
「中身は全然同じ。息子も娘も出しちゃうもん。みんな動物にして『けものフレンズ』みたいにしようかとも思ったんだけど(笑)。キャラはちょっと変えますけど、まあ、パチンコ屋の新装開店みたいなもんですね。ただ、私のマンガはつい詰め込みすぎて読みづらくなるので、今度はなるべく読みやすくしようとは思ってます」
記念すべき第1話では『できるかな』の取材でキャバレーに入店した際のエピソードを枕に、子供がいたから頑張れた「かあさん」に代わり「全く頑張らないりえさん」が登場。近所のクレーマーじじいにさっそく一発かましている。
ちなみに、来年(2018年)は西原氏デビュー30周年。「『恨ミシュラン』とか『できるかな』とかでドサ回り芸人みたいなことやってたのが、『毎日かあさん』で“自分ロンダリング”に成功した」と笑う西原氏だが、変えるところは変えつつも、軸はブレない。常にお客さんを楽しませることを第一に考えつつも、言いたいことは言う。そんな姿勢が、浮き沈みの激しいマンガ界で生き残ってこれた要因のひとつだろう。
「週刊SPA!」12月5・12日合併号(11月28日発売)には、できるかなシリーズの新作「包丁できるかな」完結編が掲載される(サイバラ包丁限定販売のお知らせも)。2018年1月にはデビュー30周年を記念したムック『文藝別冊・総特集 西原理恵子』(河出書房新社)も刊行の予定。背脂の乗り切った西原氏の活動から、今後も目が離せない。<取材・文/日刊SPA!取材班>
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『毎日かあさん14 卒母編』 シリーズ累計250万部突破! 作者の「卒母(そつはは)」宣言で、これが最終巻 ![]() |
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