純喫茶での一期一会。「男なのか女なのかがわからないヒト」との思い出――山田ゴメス
―[山田ゴメス]―
カフェではなく、まるでタイムマシンで彷徨い込んだような、昔からある古い純喫茶――ここにはマン・ウォッチングの対象として最高の“味なヒトたち”が、なにかの磁場に引き寄せられ、まるで自然現象のごとく集まってくる……。今日はそんなお話を、喫茶店でしか原稿が書けない、「ノマドの先駆者」を自称するゴメス記者が、イラスト付きで綴ってみたい!
ゴメス記者が常連の一つとする、都内にある某喫茶店のカウンター“指定席”横に、約5回に一回の確率で隣り合わせるヒトがいる。僕は、ここではほぼ100%の確率で原稿を書いているんだが、このヒトが隣に来ると、いつも気が散って気が散って執筆に集中できなくなる。理由は、そのヒトが「男性なのか女性なのかがよくわからないから」だ。
「性別を見誤るほど女装があまりに見事すぎる」ケースでは、別にない。むしろ服装は地味で、たいがいがジャンパーにジーンズといったユニセックス(?)なファッションを身にまとっている。
髪型はちょっと茶色がかった、さらさらのキレイな髪質のマッシュルームカットで、ワインレッドの四角い縁のメガネをかけている。ヒゲや手の甲のムダ毛は一切ナシのつるんつるん状態で、化粧っ気もたぶんない。なぜ「たぶん」なのかと言えば、真紅に近いピンク色で、それが「ルージュ」なのか「基からの素材」なのか、判別するのが微妙なラインなのである。
身長は160センチ前後といったところで(コレもまた微妙!)、体型はややぽっちゃり型。また、ゆったりめのシルエットのジャンパーゆえ、胸の膨らみを確認することは困難。かならず手ぶらで来店するから、バッグなどの持ち物でジャッジするのも無理。レジでお会計をするときも、「ご馳走さま」の一言もなく、ただ黙々と会計を済まし、去っていくので、“声”からの見極めもできない。
ところが、ある日! そんなもやもやに苛まれ続けていた僕に、千載一遇のチャンスが舞い降りてきた!!
なんと! その「男性なのか女性なのかがよくわからないヒト」の席に置いてあったスマホが着信音を鳴らしたのである。腕組みをし、執筆に行き詰まっているフリをしながら“お隣の会話”に耳を傾ける……。
「おう! ひさしぶり!! なんやいきなり? どないしたんや!?」
無茶苦茶ガラガラ声だった……。しかも関西弁! この日を境に、僕の悶々とした想いは一気に消し飛んでしまったわけだが、今度はその“凄まじすぎるギャップ”が、はたして狙っているのか、それとも天然なのか――が気になって気になってしょうがないゴメス記者なのであった……。
【山田ゴメス】
1962年大阪府生まれ。マルチライター。エロからファッション、音楽&美術評論まで幅広く精通。西紋啓詞名義でイラストレーターとしても活躍。著書『クレヨンしんちゃん たのしいお仕事図鑑』(双葉社)
<取材・文/山田ゴメス>大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター兼コラムニスト&イラストレーターであり、「ネットニュースパトローラー(NNP)」の肩書きも併せ持つ。『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。保有資格は「HSP(ハイリー・センシテブ・パーソンズ)カウンセラー」「温泉マイスター」「合コンマスター」など
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ