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夢の海外就職なのに手取り11万円のブラック労働…イジメ、盗聴も!? 日本人女性に待っていた過酷な現実

陰湿な嫌がらせ…挙げ句の果てには盗聴まで

 ブラック労働に加えて、香港人スタッフからの執拗な嫌がらせや監視行為にも耐えられなかったという。職員のうち約1割が日本人。とにかく彼女たちには自由がなかったそうだ。 「生徒の中に香港人スタッフの“”が混じっているんです。教師の授業レベルはどうか、準備を怠っていないかなど逐一報告されるんです。報告されたら罰として受け持つ授業を増やされます。生徒は『せんせー! せんせー!』とつたない日本語で慕ってくれますが、正直誰も信用なんてできませんでした」  授業が終われば“犬”による監視からは逃れることができた。しかし、香港人スタッフからの監視はプライベートにまで及んでいた。 「校舎には盗聴器がいくつも仕掛けられていました。日本人が溜まりそうな休憩室や女子トイレ、さらには私の部屋まで聞かれていました。ある日自分のデスクのPCを開いたら同時に録音アプリも起動したこともありましたよ。盗み聞きしていないと分からないようなことを私たち日本人にチクチク言ってくるんです。  しかも、こそこそ盗聴するのではなく、当たり前のようにするんです。お前たちは常に監視されているんだぞってことを伝えるかのように。数少ない優しい香港人スタッフが直接教えてくれました。『全部盗聴されているから下手なことは話さないほうがいい』って。不満を言えば授業時間が増えるだけです。もうどんなに嫌がらせをされても構わないので、授業が増えることだけは避けたい。そんな気持ちだったので、一切文句は言わずに黙々と仕事をしていました」
香港

屋台式の書店

海外就職は甘くない…

 同僚の日本人スタッフたちの目にはクマができ、顔がドス黒くなってきたころ、日本にある知人の会社から声がかかり相川さんは迷わず帰国を決意した。 「香港人は日本文化と日本人に強い憧れを持っているんです。でも自分たちは日本人には負けていないというプライドもあり、それを見せつけてやりたいという気持ちが働いているように感じます。はっきり言ってしまうと、とても幼稚ですよね。イギリスとの再統一運動にも見られるように、香港人は中国人を明らかに差別しています。それは普段の生活の端々からも見て取れます。そのような国民性というのは根強いのもので、私が辞めた日本語学校でもいつまでたっても同じことが繰り返されるのではないでしょうか」  あくまで彼女の個人的な見解ではあるが、夢だった海外就職が異国文化への嫌悪感を生むきっかけになってしまうこともあるかもしれない。  日本での生活が嫌になったとき、「ここじゃないどこかへ」という気持ちは分からなくもないが、安易な海外への移住は、そう甘いものではないのだ。 <取材・文・撮影/國友公司>
元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion
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