お金

「NEM」に熱狂的なファンが多いワケ――マンガで覚える「仮想通貨今昔物語」

NEM機能3 独自トークンを発行できる「モザイク」

 さらに特徴的なのは「ネームスペース(namespace)」と「モザイク(Mozaic)」という機能だ。モザイクは独自トークンを発行する機能であり、そのモザイクを発行するのに必要なのがNEMのネットワーク上に“住所”のようなものを作れるネームスペースという機能。NEM公式情報では、「インターネットでいうドメインのようなもの」と紹介されている。  一般にビットコインなどを送金する際には長ったらしいウォレットアドレスを入力する必要があるが、NEMの場合はネームスペースを指定するだけで送金可能。仮に「SPA!」というネームスペースを取得すれば、「SPA!」と入力するだけで送金先を特定できるのだ(厳密には、さらに2つの“サブネームスペースを取得可能なため、「SPA!.□□□.△△△」などとなるケースも)。  おまけに、その「SPA!」というネームスペースではモザイク機能を利用して独自トークン(コイン)を発行することが可能だ。ネームスペースがインターネット上のドメインだとすれば、モザイクはそのドメインのWebページ上に貼られている画像やコンテンツだと考えればいい。つまり、「XEM」というNEMの仮想通貨の単位は、「NEMというネームスペース上で発行されたトークン=XEM」なのだ。  なお、仮想通貨取引所Zaifを運営するテクビューロが’17年にICO用プラットフォームを構築するべく、「COMSA」(CMS)というトークンを発行するICOを実施したが、このときにはイーサリアムをベースにした「CMS:ETH」とNEMのモザイク機能を利用した「CMS:XEM」という2種類のトークンが発行されている。  コインチェック事件後にホワイトハッカーらが盗まれたNEMの追跡を開始したことが話題になったが、このときに利用されたのもモザイクだった。犯行に用いられたウォレットおよび、盗まれたNEMを受け取ったウォレットなどに、マーキングしたトークン(モザイク)を送りつける仕組みを作り上げたのだ。このマーキングトークンは「作成者しか移動ができない」という制限をつけることで、送りつけられたウォレットが勝手に処分できないようになっていた。マーキングのあるウォレットから入金を拒否するよう取引所などに呼び掛けることでNEMの換金を防ごうとしていたのだ(3月に追跡は打ち切り)。

NEM機能4 株主総会でも使われた「投票」機能

 さらにさらに、NEMには「投票機能」まである。文字通り、NEMのネットワーク上で投票ができる仕組み。これを生かして東証一部上場のシステム開発会社・インフォテリアは株主総会における議決権行使の投票を実際に行っている。議案ごとにモザイク(独自トークン)を作成し、賛成用と反対用のアドレスも作成。保有するインフォテリア株の数に応じて、モザイクを配布して投票してもらったという。 「紙でもよくない?」と思う人も多そうだが、NEMを利用すれば投票の呼びかけ人=インフォテリアが結果を改ざんすることができないうえに、第三者が簡単に結果を照合することが可能。おまけに低コストで複数の投票を行う仕組みを用意できてしまうのだ。  実際にはイーサリアムでも同様の投票機能を利用することができるが、前述のとおりイーサリアムのスマートコントラクトでは投票の仕組みを1から構築する必要がある。NEMのほうがはるかにハードルが低く、簡単に導入できると言っていいだろう。

NEMの特徴はオープンな仕様と思想にアリ!

 このように特徴的な機能をたんまり有しているNEMだが、それを実現しているのはNEMならではの“オープン”な仕様と思想だ。 「全ての人にブロックチェーンの力を」というフレーズを聞いたことはあるだろうか? これは誰もが参加可能な“パブリックブロックチェーン”としてのNEMを利用して、クローズドな「プライベートブロックチェーン」のプロジェクト「Mijin」を推し進めているテックビューロが、Mijin発表時に利用したフレーズだ。

ブロックチェーンに直接繋がるNEMのAPI

 ビットコインやイーサリアム、NEMなどの仮想通貨には「API」という機能が備わっている。「アプリケーション・プログラミング・インターフェース」の略で、ソフトウェア同士がデータをやり取りするための「窓口」やその「仕様」を意味する。通常、インターネット上で仮想通貨の取引を行う際にはWebブラウザを起動して取引所にログインして……という手順を踏むが、APIを利用すればブラウザを介さずに直接、取引所のサーバーとデータのやり取りを行うことが可能なのだ。そのため、自作の自動売買ソフトなどをAPIで繋ぎ、仮想通貨トレードを行っている投資家も少なくない。  そのなかで、「特にNEMはAPIが充実している」と言われている。ビットコインの場合は、基本的に取引所がAPIを用意しており、そのAPIを通じて直接アクセスできるのは取引所のサーバーのみ。だが、NEMの場合はユーザーが個々に作ったソフトウェアをAPIで繋げて、直接NEMのブロックチェーンにアクセスすることができる。ビットコインなどよりも「ユーザーおよび開発者フレンドリー」な仕様と言っていいだろう。前述のmijinはプライベートブロックチェーンを利用したプロジェクトだが、NEMそのものにも「全ての人にブロックチェーンの力を」という狙いが込められているわけだ。

「富の再分配」に優れたPoI(プルーフ・オブ・インポータンス)

 その狙いは取引承認の仕組み(コンセンサスアルゴリズム)にも表れている。NEMは資金力のあるマイナーたちにマイニング報酬が偏らないように設計された最初の仮想通貨。ビットコインの「PoW」(プルーフ・オブ・ワーク)に対して、NEMは「PoI」(プルーフ・オブ・インポータンス)という仕組みを採用しているのだ。 「インポータンス」(重要度)に応じてPoIスコアが付けられるようになっており、そのスコアは保有しているNEMの量や取引した回数などによって変動。スコアが高いほど多くの報酬が得られる仕組みだ。これをビットコインなどの「マイニング」に対して、NEMでは「ハーベスティング」(収穫の意)という。  ハーベスティングによって行う作業そのものは、マイニングと一緒だ。取引データ(トランザクション)をブロックにまとめて、ブロックチェーンに記録する。PoIスコアの高い人がその“記帳”の権利を獲得して、一定の手数料(ハーベスト)を得るという塩梅だ。  このハーベスティングに参加するには1万XEM以上の残高が必要だが、直近のレートに当てはめれば必要な資金は50万円程度。高額な採掘用マシンや大量の電気を必要とするマイニングよりも、はるかに低コストで参加できるのは間違いない。NEMの保有量だけでなく取引を頻繁に行うことでPoIスコアが上がるため、「富の再分配」という面でも優れている仕組みと言えるだろう。

仮想通貨界随一!? 熱狂的ファンが多いNEM

 そのため、“ファン”が多いのもNEMの特徴の1つと言える。コミュニティ内では「ネムラー」や「Nember」などと呼ばれるファンたちが、NEMをモチーフにしたイラストやグッズを多数制作。2017年12月にはNEM払いのフリーマーケット「nemket」なども有志らによって開催されている。同じく12月には東京・渋谷に「nembar」がオープン。オープニングイベントにはNEM.io財団副代表のジェフ・マクドナルド氏も来店したことも話題になったのだ。
次のページ right-delta
すべての人にNEMのブロックチェーンを!
1
2
3
テキスト アフェリエイト
新Cxenseレコメンドウィジェット
おすすめ記事
おすすめ記事
Cxense媒体横断誘導枠
余白
Pianoアノニマスアンケート