更新日:2018年05月07日 15:56
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脱走したくなるほどの“刑務所いじめ”の実態「刑務官に目を付けられたら地獄」

「とにかく懲罰房だけは避けたい」

 刑務官には好かれるタイプだったという五十嵐さん。しかし、ほかの受刑者との間に起きた殴り合いの喧嘩で懲罰房行きに。その処遇に納得のいかなかった五十嵐さんは抗議したが、結果として懲罰房内で刑務官に目を付けられてしまった。 「懲罰房では朝から夕方の5時までずっと正座や。気に入られている奴は『まあ適当に座っとけや』という感じやけど、俺の場合しつこいくらいに刑務官が見回りしとるんや。ちょっとでも首が動こうものなら『なに動いとんじゃボケェ!』と怒鳴られて別室に連行や」 「そりゃ横くらい向くやろ!」と抵抗してしまった五十嵐さん。10日間の懲罰房暮らしは一発で20日間に延長。逮捕歴のない筆者としては1日でも耐えられるか微妙なところだが、それが20日間も続くとなると気がおかしくなりそうだ。刑務官への暴行や集団での喧嘩などの重い違反を犯した場合、五十嵐さんのいた刑務所では60日間の懲罰房行き。逃げられる状況ならば迷うことなく逃げ出してしまいそうである。

受刑者同士のいじめ…刑務所にはテロリストがいる!?

 そして厄介なのが受刑者同士のいじめだという。受刑者にとってやはり避けたいのは懲罰房行き。それは全員に共通することなので、気に入らない奴がいればそこへ送り込むのだ。 「刑務所内にはいくつか派閥があるんや。その兄貴分がな、ほかのグループに気に入らない奴がいると手下の奴に飛ばせるんや。それで2人仲良く懲罰房行き。どっちが仕掛けたとかやない。関係なくまとめてぶち込まれるんや。ホント、テロみたいなやり方や。刑務所にはテロリストがいるんや」  飛ぶというのは相手に飛びかかり騒ぎを起こすこと。飛ばれた人間はたまったもんじゃないがその手下も不憫である。兄貴分のいうことなので従うしかないうえに、飛んだ相手には退所まで恨まれ続けるのだとか……。
西成

夜の西成区あいりん地区

 力関係がすべての刑務所内ではとにかく目を付けられたら終わり。平尾容疑者がいた松山刑務所の施設は模範的な受刑者が集まる場所。周りがエリートだらけなだけに、ちょっとしたことでも目立ってしまう環境だったのかもしれない。平尾容疑者は「あと半年で出られるとわかっていたが、それでもつらいので逃げた」と供述しているらしい。間違っても刑務所には入りたくないものだ……。<取材・撮影・文/國友公司>
元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion
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