堂々完結! 英語力ゼロだったバツイチおじさんが世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる本当の理由〈最終話〉
そして、五つ目。今回連載をやめることになった最後の理由。
それは――、『別れた奥さん』です。
旅する直前に飲んだ、中学高校時代のバスケ部の親友・中道の言葉がずっと引っかかってます。(連載第5話を参照)
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中道「あ? 世界一周花嫁探し? 調子乗るなよ。そんなブログを見た奥さんの気持ちも考えろ」
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俺は馬鹿でした。親友はとっくに俺の性格と本質を見抜いていたのです。俺はそのことに気づかないふりをしていたのです。それでも、離婚を切り出した元嫁への憎悪をモチベーションにこの連載を書き始めました。連載を書けば書くほど傷ついた心が癒される気がしました。しかし、2年と9か月も一人でふらふらと世界を放浪した今、なぜかその憎悪は完全に消えて無くなってしまいました。元々忘れっぽい性格なのかもしれません。今、元嫁にはこんなワガママな奇人に長年付き添ってきてくれた感謝の念しかありません。
「いっぱい迷惑かけてごめんね。いっぱい傷つけてごめんね。よくよく考えると悪いのはいつも俺のほうです。それなのにいろいろありがとう。感謝しています」
以上のような理由で今回をもって連載を休止することに決めました。
ここに至るまで大変長い時間がかかってしまいました。
やはり俺は時間の感覚が狂ってますね。
連載をずっと楽しみに待って下さった方々、本当に申し訳ございません。
もしこの連載を再開するなら、これらの問題が全て解決した後になるので、いつになるかわかりません。ただ、旅が終わって日本に帰国した後、1回は何らかのカタチでこの旅を表現したいと思います。それはこの連載かもしれないですし、写真の個展かもしれないし、本、漫画、映像作品、新しいテクノロジーを使った表現かもしれません。でも、必ず何らかの形でご報告したいと思います。
これから残りわずかな所持金でアフリカ縦断と、できることなら行けるとこまで中南米を旅したいと思います。資金が尽きるまで旅を続けます。
最後になりますが、この連載を決意した時からずっと心に引っかかっている言葉があります。それは元嫁との結婚式の時の神父様から頂いた言葉です。
神父「演出家が結婚を演出してはいけない」
もしかして「世界一周花嫁探しの旅」をしてる間、俺はずっと自分自身を偽りながら演出し、旅をしていたのではないかと思います。
そんなことでは真実の恋がうまくいくはずありません。
当時はわからなかった神父様の言葉が、今やっと心に落ちました。
これから「世界一周花嫁探しの旅」を捨て去って、『精神と時の旅』をしたいと思ってます。これから出会う人、これまで出会った人の縁を大切にし、もっともっと優しい人になれるよう精進していきたいと思います。
かっこいいことを言っていますが、ただ単に、旅が本当に大好きになってしまっただけかもしれません。
旅先でよく聞かれる質問があります。
「旅をして人生って変わりました?」
俺は答えます。
「特にないです。旅をして、ただここにいるだけです」
「恋愛観変わりました?」
俺は答えます。
「前と一緒です」
その質問を受けるたびに、大好きな近藤真彦さんの歌「ギンンギラギンにさりげなく」の一節を思い出します。
きっとそれが今の俺の恋愛観であり人生観です。
ついて来い どこまでも
決めた 愛は 離さない! Hold on おまえを…………………
ギンギラギンにさりげなく
ふたりの恋のやり方
ギンギラギンにさりげなく
さりげなく 生きるだけさ
ギンギラギンにさりげなく
そいつが 俺のやり方
ギンギラギンにさりげなく
さりげなく 生きるだけさ
あ、ちなみにですが一応、恋愛の近況報告しますね。
3年近く旅をしながら英語もずいぶんしゃべれるようになりました。自分がイケメンではない、年を食ってしまってることを充分過ぎるぐらい思い知らされました。そのことで中学生みたいにガチで泣いた夜もありました。それでもあきらめず世界中の女の子に恋をしました。正確に言うと恋に落ちてしまいました。そして好きになった娘に好かれようと精一杯努力しました。筋肉をつけるため腕立てや腹筋もやりました。ヨーロッパではレディファーストの精神やワインも勉強しました。世界の宗教・文化・音楽も勉強しました。インドではヒマラヤ山脈の登頂にも成功しました。アフリカではラクダも上手に乗りこなせるようになり、サバイバル料理もおいしく作れるようになりました。やれることは全部やりました。なんとか、なんとかですが、自分自身が納得する『心のイケメン』にはたどり着きました。
そして、その結果・・・
「花嫁どころか彼女すら見つかってません」
恋愛ドラマや映画のようなハッピーエンドを期待していた読者の皆様、大変申し訳ございません。
世界中の女性にフラれ続けて気づきました。
「俺、モテないッス(涙) 素質がない…」
でもね。
でもですね。
いつか本当の愛を見つけ、旅先で見つけた世界で一番素敵な場所に彼女を連れて行き、二人で愛を語り、くっだらないことで笑うんだ!
2018年7月16日 後藤隆一郎 スーダンの首都ハルツームより
1969年大分県生まれ。明治大学卒業後、IVSテレビ制作(株)のADとして日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ!」の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ)「トリビアの泉」(フジテレビ)をチーフディレクターとして制作。2008年に映像制作会社「株式会社イマジネーション」を創設し、「マツケンサンバⅡ」のブレーン、「学べる!ニュースショー!」(テレビ朝日)「政治家と話そう」(Google)など数々の作品を手掛ける。離婚をきっかけにディレクターを休業し、世界一周に挑戦。その様子を「日刊SPA!」にて連載し人気を博した。現在は、映像制作だけでなく、YouTuber、ラジオ出演など、出演者としても多岐に渡り活動中。Youtubuチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」運営中
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