堂々完結! 英語力ゼロだったバツイチおじさんが世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる本当の理由〈最終話〉
【21か国目 モロッコ】
スペイン料理とワインを堪能した後、アフリカ大陸にあるモロッコのマラケシュへと移動することを決めました。いよいよ初めてのアフリカ大陸上陸です。
マラケシュには深夜に到着し、宿の近くにあるフナ広場に着く頃には深夜の2時を回っていました。広場にはアフリカの部族音楽、コブラ使い、沢山の屋台に多くの人々がたむろしていて、どこか混沌とした様相を呈していました。今までの国とは違う、ある種独特な雰囲気に胸の奥からとろりと湧き出てくる高揚感を覚えました。そして、「やっとアフリカ大陸に来たんだな!」と心を躍らせました。
連載第2話を参照))と、古くから友人でこの連載の担当編集でもある田辺という悪友たちが陣中見舞いと称し旅先に遊びに来てくれることになりました。待ち合わせは古都フェズ。二年半ぶりの再会です。彼らは「せっかくモロッコに来たから、どうしてもサハラ砂漠が見たい」と言います。
俺「いやいや。ここからサハラ砂漠は遠いし、一度見たからもういいよ」
田辺「何言ってんすか。せっかく来たんですよ僕らは!」
俺「安宿でダラダラしようよ。積もる話もいっぱいあるし」
田辺「いや、サハラ砂漠に向かう道中で話はいっぱいできます。せっかく来たんですよ僕らは!」
俺「わかったわかった。でも、サハラ砂漠にはがっつり行っちゃったからなぁ」
田辺「大丈夫です。同じルートでも景色は全然違いますから」
俺「どういうこと?」
田辺「後藤さんはマラケシュからサハラ砂漠を抜けてフェズに来たのを逆走するんですから、逆の景色を観れますよ!」
俺「いらねぇよそんなもん!」
一晩かけて語り合いましたが、彼らは子供のように意見を変えません。仕方がないのでまた嫌々サハラ砂漠に470㎞かけて移動し、2度目のテント泊をすることになりました。らくだ使いも「こんな短期間にまた来たのか?」と笑いながら驚いています。
今度は月がない新月の夜です。満月の夜は月の光が強く、星の光が打ち消されてしまい、星があまり見えませんでした。月のない砂漠の夜は一体どうなるんでしょうか?
びっくりしました。
綺麗です。物凄く綺麗です。満天の星空。もの凄い流れ星。一生分の流れ星を一夜にして見たかもしれません。地球が惑星であることを実感できました。
「月の砂漠と星の砂漠。甲乙つけがたい。どっちもイイ!」
砂漠の星空を静かに眺めながら、壮大で神聖なる地球のパワーを全身で感じました。
「そうだ!」
あることを思いつきました。
俺には恐らくかなわないであろう、ある想いがあります。
星空のなかで一番光が強い流れ星を見つけ、星に願い事をしてみました。
「●●●●が叶いますようにー!」
青春ドラマのように大声で叫びました。ただし、その内容は恥ずかしいので秘密とさせて頂きます。
しかし、俺が素敵な世界に浸っている時、旅先でも早寝が基本の金泉はテントで爆睡。おしゃべり大好きな田辺がやってきたのはいいのですが、星をチラっと見ただけでずっとしゃべり続けています。俺も田辺に気を取られ、いつの間にか真夜中の砂漠で「サブカルライターは写真を撮る時、なぜ変顔をするのか?」という星にも砂漠にも全く関係ないくだらない議論で白熱してしまいました。そして深夜3時、どこでそんな話になったのかまるで思い出せないのですが、
「俺たちに残された最後の快楽は肛門しかない」
という話になぜか行き着き、2人で真っ暗な砂漠の上で全裸になり、肛門を広げ、砂漠の風を感じるという部活ノリで盛り上がりました。最後は砂が肛門に入り、痛いのでやめるという、しょうもない形で閉幕。しかも、それを夜中に起きてきた金泉にずっと遠巻きから見られてたという……。
「砂漠の星空の下で肛門をさらす中年男性2人を、金泉は一体どんな気持ちで見てたんだろう?」
それでも、旅先まで遊びに来てくれる友達は本当に本当にありがたい。お別れした後、実は少しジーンとしていました。ずっと一人っきりで世界を回り、少し寂しかったのかもしれません。旅先で友達になってもすぐにお別れしてしまうさすらい旅で、ちょっと心が弱っていたのだと思います。本当にありがとう。
ちなみにですが、青い街で有名なシ・シャウエンにも行き、市場で買い出しをし、宿のモロッコ人オーナーとタジン鍋を作ったりと、まともな旅もしているのでご安心を。モロッコ、本当に楽しかった。
疲れていたうえに深夜の一人歩きは危険なので、フナ広場には長居はせず旧市街にある宿へと向かいました。ところが、そこは入り組んだ迷路のようでなかなか宿にたどり着けません。Google Mapもうまく機能しない。辺りの人に聞き込みをしながら宿を探しているとガラの悪そうなモロッコ人が話しかけてきました。どうやら、道案内をしてお金をせびり取ろうという魂胆のようです。こういう輩はインドや中東で沢山見てきました。無視をして歩き続けていても、そいつは俺から離れようとしません。
十数分後になんとか宿にたどり着くと、そいつが「ガイド料をくれ!」と突如迫ってきました。無視して宿に入ろうとすると俺の腕を掴んできました。ぶん殴ってやろうかと思いましたが、一言「Fuck!」と言い、中に入ろうとしました。するとそいつは悪徳セールスマンのようにドアに足を忍ばせ、ドアをこじ開け中まで入って来ました。そして宿のモロッコ人に「こいつ、案内したのにカネをくれない」と言っています。インドや中東のストリートにたむろする奴らの中には、これ以上しつこい人も沢山いましたが、体に触ったり、宿に入ってくるような輩まではいません。
かなりめんどくさいのと宿の人に悪いので、もう一度「Fuck」ポーズで中指を立てながら、それを二本指にし、間に煙草を挟み、そいつに渡す素振りをしました。すると一瞬笑ったので、そこですかさず交渉し、煙草1本でその場を丸く収めました。その瞬間「モロッコ、おもしれ~」と思い、今度は脳からアドレナリンがどくどく出ているのを感じました。
そんな調子で始まった初アフリカ大陸のモロッコでしたが、ローカルバスで世界遺産のアイトベンハッドゥ、トドラー渓谷を転々とし、サハラ砂漠最果ての街・メルズーカで一泊し、サハラ砂漠一泊ツアーに参加することにしました。モロッコのメインイベントです。ところがその日、メルズーカの街を含めサハラ砂漠はとても砂嵐が強く、2m先を目視することができません。砂で目も開けることができず、雨風雪とは違う新しい自然の脅威を体験しました。しかし、1日経つと嘘のように砂嵐が止み、雲一つない晴天になったので、砂漠ツアーへと参加できることとなりました。
サハラ砂漠を1日がかりでラクダに乗って移動し、砂漠の中でテント泊することに。着いた頃にはラクダの乗り過ぎでお尻が痛く、クタクタです。それでも、サハラ砂漠の夕日を見た時は感動しました。
日が暮れてから砂漠に住むベルベル人の民族音楽とダンスを鑑賞。タジン鍋で食事をし、暗くなるのを待ちました。というのもその夜は満月だったのです。
満月の砂漠とは一体どんなもの何でしょう? ドキドキしながらテントから出て、深夜の砂漠を見に行きました。
俺「…………」
言葉を失いました。青白い月に照らし出された青い砂漠が一面に広がっています。方々に広がる砂丘が青色にコントラストをつけ、まるで絵に描かれた青い海のようです。青い砂漠の向こうには、寄り添うようにして青白い月が輝いてます。まさに月の砂漠です。その光景は本当に本当に美しく、言葉で表現できないほど幻想的でロマンチックでした。
「これが噂に聞くアラビアンナイトか!」
こんな美しい景色は今まで見たことがありません。
なぜか目に涙がじんわりと溜まり、もう少しで泣きそうになっていました。
サハラ砂漠を後にし、モロッコを半周した後、当時SPA!編集長で現News Picks編集長の金泉(連載当初、俺を漢字一文字で表すと『時』と表してくれた大学時代からの親友。
1969年大分県生まれ。明治大学卒業後、IVSテレビ制作(株)のADとして日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ!」の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ)「トリビアの泉」(フジテレビ)をチーフディレクターとして制作。2008年に映像制作会社「株式会社イマジネーション」を創設し、「マツケンサンバⅡ」のブレーン、「学べる!ニュースショー!」(テレビ朝日)「政治家と話そう」(Google)など数々の作品を手掛ける。離婚をきっかけにディレクターを休業し、世界一周に挑戦。その様子を「日刊SPA!」にて連載し人気を博した。現在は、映像制作だけでなく、YouTuber、ラジオ出演など、出演者としても多岐に渡り活動中。Youtubuチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」運営中
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