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なぜボクシング山根会長の暴走は許されてきたのか? 実年齢も経歴も不詳の人物…

社団法人ならではの情報の遮断

 女子レスリング、日大アメフト部、女子水球日本代表……アマチュアスポーツにおける指導者のパワハラが次々と問題になっている今だからこそ、やり玉に挙げられている部分は少なからずあるだろう。しかし、プロも含めて選手や関係者の間では以前から山根会長の悪評は響き渡っていた。今回の件で「ざまぁ見ろ!」と溜飲を下げている人も少なくない。 「これはアマチュアボクシング業界全体というより、山根会長個人の問題という側面が強い。したがって山根会長が退陣したら、沈静化するんじゃないでしょうか。山根さんの就任前、連盟の会長には日大ボクシング部元監督の川島五郎さん(故人)が就いていた。川島前会長もワンマンな人だったから、実はその頃も奈良判定じゃなくて“日大判定”が問題になっていたんです。ただ、やっぱり川島前会長と山根会長では悪行の質・量が違いすぎて、一緒にするのは議論としても乱暴すぎる」(岩崎氏)  その一方で、「これを機に抜本的な改革を図るべき」という声も大きい。たとえば現在のボクシング連盟は社団法人であることから情報公開をしないで済んでいる面があるが、これを財団法人にすることで、お金の流れや人事について明確化しようという意見。さらにプロとの関係を見直そうとする動きもある。ボクシング業界は、プロとアマの間に非常に深い溝が存在するのだ。 「決定的だったのは、村田諒太選手がプロ転向した際に“選手強化寄付金”という制度をアマ側が一方的に作ったこと。これは事実上の移籍金で、法外な値段を請求することもある。建前としては『選手をアマチュア時代に育てたのだから、その費用をプロ側は払うべき』というものですが、プロ側としては当然面白くはない。それに『誰が指導をしたのか?』という問題も出てきました。たとえば松本圭佑選手は父親の指導のもと、小学生の頃からトレーニングを積んで強くなったパターン。学生時代もアマチュアとして目覚ましい実績を残していますが、これは別に学校のボクシング部のおかげではなく、父親の指導が的確だったからなんです」(岩崎氏)  KO寸前の日本ボクシング連盟が、果たして自力で体勢を立て直すことができるのか? もう今までのやり方は通用しない。平成も終わろうとしている中、昭和の体育会系が持っていた軍隊式な体質が全否定されている。ボクシングに限らず、アマチュアスポーツの世界が大きな曲がり角に来ているのは間違いない。〈取材・文/小野田 衛〉
出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。
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