雑学

サマータイム導入のバカらしさ。麻生太郎氏の妄言にも呆れた<鴻上尚史>

― 連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―

サマータイム いやもう、書くのもバカバカしいんだけど、でも、「バカバカしい」と思って何も発言しないと、そのまま進んだりする時代になっているから、やっかいなんですなあ。

 何の話かというと、「サマータイム」ですわ。

 僕が最初に目にしたのは、産経新聞の記事でした。

「政府・与党は、東京五輪・パラリンピックの酷暑対策として、夏の時間を2時間繰り上げるサマータイム(夏時間)導入に向け、本格検討に入った」なんてことですよ。で、「秋の臨時国会への議員立法提出を目指す」と説明して、「サマータイムは、昭和23年、連合国軍総司令部(GHQ)の指示で導入された」と、サラッと書いているわけです。

 でもね、昭和23年からのサマータイムは、1時間でした。新聞記事なのに、肝心なことが書いてないのです。意図的に避けたのか、そもそも調べるつもりがないのか。

 だって、毎日、規則的な生活を送っている人に、「明日から1時間、早く起きろ」と言うのと「2時間、早く起きろ」と言うのは、大きく違うと思いませんか? この記事を書いた新聞記者さんは、1時間も2時間も関係ないんでしょうかね。

 でね、サマータイムの説明では「日照時間の長い夏に、一斉に時間を1~2時間繰り上げ、明るい時間を有効活用する制度」なんて書いているのですよ。あたしゃ、2時間のサマータイムなんて、聞いたことないですね。欧米では、ほとんどが1時間。まれに30分ですよ。

 いつのまに、「2」という数字が入ったんでしょうか。ひょっとしたら、僕の知らない国で2時間があるのかと思って、ツイッターで「博識な方、教えて下さい」と聞きました。すると、「メタリック」さんという人が、「かなりのレアケースですが、連合国占領下のドイツで1945年と1947年に実施された事が。1945年の場合はソ連占領地域とベルリンで+2時間のサマータイム。1947年の場合はドイツ全土で+1と+2時間の二段階のサマータイム」と教えてくれました。

 それで、サマータイムに「2」を入れるなんて、無理がありすぎないか。そもそも、政府が言い出すまで、どこも「時計を1時間早めること」と書いていました。

次のページ 
マラソンの開始時間を早めればいいだけ

1
2
この世界はあなたが思うよりはるかに広い

本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録





おすすめ記事