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サマータイム導入のバカらしさ。麻生太郎氏の妄言にも呆れた<鴻上尚史>

マラソンの開始時間を早めればいいだけ

マラソン  1時間だとダメだという判断でしょう。この制度が導入されると、朝7時からのマラソンが、朝5時から走れるようになる、としています。  8月14日の産経新聞では、「麻生氏は『確か俺の記憶だけど、違ってたらごめん』と付け加えた上で」、ある新聞社がサマータイムをあおり、そして中止にしたと発言して新聞社を攻撃したと報道しました。  そして、「北緯40度以上の国では多分、日本以外はみんな(サマータイムを)やっていると記憶している」と。  いや、これ、新聞記事じゃないでしょ。僕は産経新聞に知り合いの編集者が何人もいるし、芝居の時は取材を受けます。僕は産経新聞はちゃんとした新聞社だと思っています。でも、この記事は個人ブログ以下です。 「『確か俺の記憶だけど、違ってたらごめん』と付け加えた上で」と書いていいのなら、何でもありです。何でも書けます。たとえ本人がそう言ったとしても、それをこんな前提で新聞は活字にしては絶対にいけないのです。  なおかつ、「北緯40度以上の国では多分、日本以外はみんなやっている」が、調べればすぐに嘘だと分かります。ネット時代なんですから、5分もあれば分かります。そもそも、北緯40度は秋田県・岩手県以北です。日本を北緯40度以上の国と定義するのは無理があります。  北緯40度以上に首都(主要都市)があって、サマータイムを実施していない国・地域は、ざっとあげても、ロシア、ベラルーシ、アイスランド、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、カナダ・サスカチュワン州等です。  産経新聞はどうしても、国策としてサマータイムを推進したいのでしょうか。  でもね、サマータイムなんてやらなくたって、ただ、マラソンの開始を午前5時にすればいいだけですよ。なぜ、国民を総動員して、オリンピックのために、人間の生理を無視した2時間というサマータイムを導入しないといけないのか。まったく理解できないのです。
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本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録

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