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こんな穴だらけの「外国人法案」を自民党はよく通したものだ――江崎道朗

 では聞くが、外国人児童生徒の教育をどうやって充実させるのか。ベトナムやインドネシアなどから子供が小学校などに編入してきた場合、通訳を誰がどのようにして準備するのか。日本語ができない家族への対応は誰がするのか。  法務省のデータによれば、’18年1月の時点で、不法残留者は6万6498人、技能実習生の失踪者数は’17年だけで7089人に上る。そこでこの法案では「出入国在留管理庁」を創設し、在留外国人を一元管理する仕組みを整える。この点は評価するものの、これまで以上に外国人労働者を受け入れれば、失踪・不法在留者は増えることになろう。  この問題についても法務省は《失踪・不法残留が発生した場合には、警察等関係機関とも協力して、摘発等を強力に行う》と素っ気ない。技能実習生の失踪とそれに伴う犯罪についてもどこか他人事だ。この制度を悪用してテロリストやスパイが入ってくることへの対策も不明だ。  よくまあ、こんな生煮えの法案を自民党は通したものだ。昔の自民党ならば「こんないい加減な法案を国会に出せるか」と、法務省を一喝していたはずなのだ。自民党には、責任政党としての矜持を思い起こしてもらいたい。
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。
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